Jリーグとプレミアリーグの試合内容に差がある理由 選手の技量の違い以上に深刻な問題
連載第3回
杉山茂樹の「看過できない」
8月が終わろうとしているが、日は短くなってきたものの、秋が近づく気配は一向にない。8月24日、J1リーグ、横浜F・マリノス(6位)対セレッソ大阪(7位)が行なわれた国立競技場。スタンドには時折、涼風がそよいだが、サッカーはここ2カ月間見てきた試合同様、ダウンテンポそのものだった。時間の進みが遅いと感じられる一戦となった。
C大阪は、相手ボールに転じるや自軍にサッと引き、後方にブロックを築いた。しかし、「志が低い」と批判する気力は湧かなかった。観戦しているこちらも蒸し暑さに朦朧とし、集中力が鈍りがちだったからだ。この時期に試合をやることそのものに無理があると、実感せずにはいられなかった。選手が可哀そうに見えてくる。
約4万8000人の観客を集めた一戦は横浜F・マリノスがセレッソ大阪に4-0で勝利した photo by Fujita Masatoこの記事に関連する写真を見る 5年前、気温35度と聞けば驚いたものだ。決死の覚悟で外出したものだが、それがもはや普通になった。今年は梅雨の頃から暑かった。不要不急の外出は避け、水分をこまめにとり、エアコンを適宜、使ってください。テレビではアナウンサーが7月頭から同じ台詞を繰り返し述べている。熱中症で病院に運ばれた人数の報告も慣例化している。
筆者も高齢者の仲間入りをしたので、指示どおりエアコンをほぼかけっぱなしで、水分もとっていた、つもりだった。しかし、よく足がつるので病院に行けば、脱水症と診断された。
この気候は9月いっぱいまで続くだろうと天気予報士が言っていた。残りの人生、どこで暮らすべきか――そんなことも考えてしまう昨今だが、国立競技場で横浜FM対C大阪を観戦したあと、プレミアリーグのブライトン対マンチェスター・ユナイテッドを観て、「ここだ」と膝を叩きたい気分に襲われた。
なにより目が留まったのは、画面に大写しになったブライトンのファビアン・ハーツラー監督の出で立ちだった。長袖シャツの上に黒のダウンベストを羽織る秋の着こなしである。推定気温20度弱。プレミアに世界各国の選手が集まる経済的以外の理由を垣間見た気がした。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。