「サッカーはジャズ」と表現する西大伍は今、J3の舞台で何を想うのか...そして「引退」について語る (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 さらに、そうした財産を引っ提げて2021年には浦和レッズへ移籍し、新境地を求めた。

「人によって成長の測り方はそれぞれですが、ヴィッセルでも僕の考える"成長"は感じられていたし、自分ならどのチームでもやれるという絶対的自信もありました。今も、ですけど。

 でも、だからこそ契約があるから、という理由ではチームを選びたくなかったというか。キャリアの後半を過ごしているからこそ、より自分が成長できるかを基準にチームを選びたいな、と」

 常にサッカーを楽しむことと成長をセットに考えてきた西だからこそ、それは再び「自分にサッカーの楽しさを呼び戻すための選択」でもあったはずだ。その後、2022年に古巣でもある北海道コンサドーレ札幌に復帰しながら、2023年夏にはふたつステージを落として、J3リーグのいわてグルージャ盛岡に期限付き移籍したことにも、彼なりの考えがあるという。

「この年になると、環境とか、試合に出る、出ないによって、成長の度合いは左右されないというか。チームごとに求められる役割、立場があって、そこに向き合うことでも成長はできる。もちろん、試合に出るのは大事だし、だから得られてきた成長もあったんですよ。

 でも(試合に)出られなくても、筋トレを少しキツめにやっても支障はないよねとか、余った時間で他のことにチャレンジできるよね、みたいに切り替えれば、それもまた違う種類の成長を求める時間になる。

 ただいずれにしても、"楽しめているか"は僕の大事な軸なので。それを際立たせる方法は常に考えているし、楽しめていなければ、変化を求めるのは当然だと思っています」

 近年、うまく休むことを考えるようになったのも、彼なりの楽しむ方法のひとつだ。サッカー界に限らず、スポーツ界はどことなく休むことをよしとしない風潮があるが、西いわく「本当にサッカーが好きだからこそ、離れる」ことに意味があるという。

「楽しくなくなってきたら休むって言うと、サボりみたいに思われそうだけど、それとは全然種類が違います。実際、サッカーから離れることで見えるものや、見え方が変わったり、感覚に変化が生まれることもあるから。楽しくないという気持ちに蓋をしてプレーしていてもケガをしちゃうし、そうなるとやりたい気持ちを呼び起こすための休み以上に多く休まなきゃいけなくなっちゃいますしね。

 だから、意図的に休む時間を作り出す。じゃないと、ふとした瞬間についサッカーのことを考えちゃうから。僕にとって趣味の釣りはそのひとつ。サッカーのことを忘れて没頭できますしね。自分なりに休む方法を見つけたら、ピッチに戻った時の感覚もすごくいい。新鮮な気持ちがまた湧き上がってきて、サッカーがめちゃめちゃ楽しくなります」

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