38歳になる都倉賢が「生涯現役」宣言 「経験って力」「自分の心がダメにならない限り、きっと点は取れる」

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

ベテランプレーヤーの矜持
~彼らが「現役」にこだわるワケ
第4回:都倉 賢(いわてグルージャ盛岡)/後編

今季から、いわてグルージャ盛岡でプレーしている都倉賢。photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images今季から、いわてグルージャ盛岡でプレーしている都倉賢。photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る

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 デンマークで過ごした1カ月間が自身にどれほどの影響を与えたのか、本当の意味で知ることになったのは、2014年に加入した北海道コンサドーレ札幌以降のキャリアだと言えるだろう。

 FCベストシェランとの話がまとまらず、日本に戻る決意した彼は、帰国前日になって代理人に札幌からのオファーが届いていることを聞かされる。

「札幌はずっと、水面下で『いつまでも待つので、もし日本に戻ってくることになったら札幌と契約してほしい』と言ってくださっていたらしくて。それを帰る時になって代理人に聞かされ、それならぜひお願いします、ということになりました」

 すでにJリーグは開幕していたこともあり、帰国したその日の羽田空港で札幌の三上大勝GMとの契約交渉の席につくという慌ただしさだった。

「海外移籍が実現した時のために、一着だけスーツを持っていたので、それを着てサインをしました。三上さんには『なんで、スーツを持っているんだ?』って驚かれましたけど。

 ただ、生活に関するものはほとんど捨てて日本を離れていたので、札幌で借りた部屋には当初、本当に何もなくて。家電も家具もイチからそろえなきゃいけなくて、しばらくは金欠で大変でした(笑)。でも、その経験をしているから今も、どんなこともゼロベースからでも始められるという、変な自信を持てているんだと思います」

 札幌で過ごした5シーズンは、デンマークで過ごした濃密な1カ月間を実感する毎日だった。なかでも"点を取る"ことに対する新たな気づきは、結果にも表われ、都倉は5シーズン中、4シーズンでふた桁得点を実現。2018年には自身にとって初めて、J1リーグでの"ふた桁得点"を達成した。

「海外の選手って、たとえばFWなら、ほかのプレーはイマイチだけど、反転してシュートだけはめちゃうまくて点を取れるとか、サイドバックなら、ドリブルにスピード感はないけど、パスが来た時にバシッといいところに止められるとか、クロスボールだけはひたすら精度が高いとか、自分の武器が際立っているんです。裏を返せば、そこを際立たせることを常に考えてプレーしている。

 そのことをデンマークで目の当たりにし、自分の武器、型をすごく大事に考えるようになったというか。それまでのように、いろんなプレーをできるようになりたい、という欲は捨て、ゴールから逆算して、自分の型にハメるための準備をシンプルに考えられるようになった。

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