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川崎フロンターレの復活はあるのか?「ボールを握る」伝統を受け継ぐために必要なこと (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【両刃の剣となる序盤の高い強度】

 どちらのゴールも、ベテランならではの老獪さが見えた。39歳のソンリョンが守護神となった一方、38歳の家長昭博が攻撃をけん引する。それぞれ「試合巧者」というのか、全盛期と比べたら衰えは隠せないが、試合の分岐点で、潮目を変えるセービングを見せ、状況を把握して痛撃を食らわせている。

「決めきれないと、苦しい展開になる。チーム全員で確認しないと。我慢強く戦えるように......」

 後半に追いつかれて1-1で引き分けた柏戦後、鬼木達監督はそう説明していた。試合の流れは、名古屋戦も大きく変わっていないが、違いはより早い時間帯で2点のリードを奪えたことか。指揮官は「自信を持ってボールを受け、やり続けることが大事」と語るが、追加点を奪えたことがゲームマネジメントを楽にした。

 それが単純にドローと勝利を分けた違いだが、勝負の本質はその奥にある。

 結果が出ていないことで、川崎は試合序盤からかなり強度の高い攻守で挑んでいる。たとえば柏戦も、前半途中まで優勢で、ポゼッション率は70%以上だった。相手に息をつかせない。30分、家長が縦にボールを入れ、バフェティンビ・ゴミスが戻したところ、脇坂泰斗が遠野大弥との短いパス交換から抜け出し、ゴールネットを揺らした。連係面はハイレベルで、全盛期の川崎を彷彿とさせる美しい得点だった。

 全開の攻守がはまればアドバンテージを取れるし、それは川崎らしい。

 だが今は、序盤に「得点を取らなければ」という力み、強迫観念が見える。これでは、たとえリードできても、パワーを大量に消耗する危険を孕んでいる。結果、試合が進むにつれて足が重たくなる傾向にある。必然的に相手にアドバンテージを奪われて、守勢に回る。事実、多くの試合でリードを奪いながら、守りきれずに失点し、同点に追いつかれる、あるいは逆転されるというパターンを繰り返している。

 怒涛の勢いで畳みかけ、勝ちきるのは理想と言える。しかし、歯車が噛み合うまでは、ベテラン特有の緩急をつけた戦いでしのぐ老練さも必要かもしれない。そのプロセスで、DF高井幸大、MF山内日向汰、FW山田新という生え抜きの若手がフィットするだろう。ベテランと若手をつなぐ脇坂、橘田健人、ジェジエウなど実力者はいるし、エリソン、ゴミスも起爆剤になれるはずだ。

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