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「ふざけんなよ、自分の体!」――田中順也が「娘から辞めないで」と言われながら現役引退を決断したわけ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 とりわけ田中が気になったのは、「メンタル面」である。

「J1で活躍する人たちって自信をなくす時間がもったいないから、ミスっても落ち込まない。だから、先輩に叱責されても『は~い、次やりま~す!』っていうくらいの反応がほしいんですけど、(岐阜の若い選手は)シュンとなっちゃう。逆に僕のほうが『違う、違う。怒ってないから、落ち込まなくていいよ』ってフォローする、みたいな(苦笑)」

 田中は岐阜へ移籍するにあたり、はなから指導者半分の気持ちだったわけではない。あくまでも選手として活躍することを第一に、「あわよくば10点以上取りたいと思っていました」。

「点を取るのが年々難しくはなっていましたけど、フィットネスは落ちても技術レベルは落ちてないので、昨季(2023年)に関しては中盤でボールを受けてアシストすることにフォーカスしようと思って臨んでいました。シーズン序盤から(自身のアシストによるゴールが)ポンポンと取れたんで、よし、いけるぞと思っていたんですけど......」

 しかしながら、たとえ現状ではベテラン選手のほうが結果を残せるとしても、将来性を考えて若い選手を使いたい。どんなチームであれ、そんな流れは多少なりともあるものだ。

 あるいは、ベテラン選手を使うにしても、先発ではなく、切り札としてベンチに置いておきたい。そんな考えもあるだろう。

「そこはちょっと難しかったですね。自分の思いどおりには(監督が)采配を振ってはくれないので。もっと信頼して使ってよっていう気持ちは、たぶん永遠に選手のなかにあるものだと思うんですけど、でも、自分がそれだけの信頼を勝ち取れていないのも事実。そのジレンマは感じながらやっていましたね」

 ならば、自分から身を引いて、下支えに回ったほうがチームのためになるのかな――。田中は自然と、そんなことを考えるようになっていた。

 その一方で、「筋肉系のケガが増えてきた」ことも、引退を考える引き金となっていた。

 田中はもともと「細心の注意を払って体のケアを行ない、自分の体を繊細にわかっているタイプ」である。だからこそ、「このくらいまでは体を動かしても大丈夫っていう、その感覚値も高かった」という。

 ところが、従来なら「まだ大丈夫」だったラインが、歳とともに「これくらいでダメなの?」に変わっていく。

「練習の負荷にちょっとずつついていけなくなったり、それこそ自分が一番調子よかった時の7、8割の強度しか出せていないのに、筋肉は先に反応してしまう。それが許せない、って言うんですかね......」

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