ジュビロ磐田のJ1昇格を支えた絆 「チームのために、という選手が揃っていた」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 86分、ジュビロ磐田の山田大記、松本昌也の二人が交代で下がったあたりからだろうか。目の前の試合よりも遠く離れた会場の様子を気にする気配が、ザワザワと立ち込め始める。いくつかのFKがあり、主審のやたらと細かすぎる注意で、無駄に再開まで長くかかり、試合そのものが間延びしたこともあるが、時間が過ぎるのが、やたらと遅く感じられた。

「終わった! 終わった!」

 スタンドの一角で奇声が上がった。他会場の結果が、徐々にスタジアム全体に伝播する。情報を得たベンチの選手たちも、暴発しそうなほどにウズウズと体をねじらせる。ピッチに立つ選手たちは、リアルタイムの情報は知らされていなかったという。ラストプレー、敵チームのロングスローの流れから混戦になりかけたが、どうにかクリアした。

 試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くと、ピッチになだれ込んだ選手が戦っていた選手たちと抱き合った。自分たちが勝ち取ったものを確信し、笑顔の花が咲く。首脳陣も入り乱れ、感極まって涙を流す選手もいた。

「"仲間のために"というの(思い)が、今のチームは強い。このメンバーで最後に笑えてよかったです」

 主将である山田は言ったが、そこに昇格の理由が集約されていた。

J1昇格を喜ぶジュビロ磐田の選手たち photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty ImagesJ1昇格を喜ぶジュビロ磐田の選手たち photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 11月12日、宇都宮。J2最終節で、磐田は栃木SCの本拠地に乗り込み、1-2と逆転で勝利を収めている。清水エスパルスが水戸ホーリーホックに敵地で1-1と勝ちきれなかったことで2位に順位を上げ、逆転でJ1への自動昇格を勝ち取ったのだ。

 序盤、磐田はトップ下に入った山田が見事にボールを出し入れし、トランジションで違いを見せる。何度もカウンターを発動。後藤啓介などがいくつも惜しいシュートも浴びせた。

 だが、未成熟なチームにありがちだが、ゴールが決まらなかったことで勢いが落ちる。途端に連続性を失い、無理なトランジションでピンチになるなど、ちぐはぐなプレーが見られる。そして23分、ズルズルとラインを下げてしまったことで、ボールホルダーを自由にし、楽々とクロスを放り込まれると、ディフェンスはマークもボールを見失い、一撃を食らった。

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