「ビジネスクラスの航空券は無理」ヴァンフォーレ甲府、ACL初体験は予算との戦い 「ピーター・ウタカはエコノミーで機内食を...」

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

【甲府からメルボルンまで24時間超の移動】

 最終的に植松さんが手配した旅の行程は、次のようなものだった。

 まず、羽田空港に向かうべく選手がバスで甲府を出発したのが9月17日(日)14時。羽田21時発のフライトで、約10時間かけてブリスベンに到着したのが18日(月)朝7時。ブリスベンで入国手続きを済ませ、4時間後には国内線に乗り継いで、夕方16時にメルボルンのホテルに到着。甲府からメルボルンまで、実に24時間を超える過酷な旅だった。

 それを考えれば、エコノミーの長距離移動でガチガチに固まった体を2日でほぐし、あれだけのパフォーマンスを披露した選手たちは称賛に値する。

 ただ、メルボルン遠征を終えた植松さんのなかには、悔しさも残っているそうだ。

「たまたま帰国便で(ピーター・)ウタカ選手の隣に座ったんですが、大きな身体を小さくしてエコノミー席に座って、エコノミー用の機内食を食べているウタカさんを見て、金銭的な事情があるにせよ、選手たちには申し訳ないなって......。

 チームの勝利のために何ができるかを考えた時、そこに悔しさは残りました」

 万全の状態でプレーさせてあげたいという植松さんの気持ちが、ひしひしと伝わってきた。確かに、この旅程でアウェーの国際試合を戦うのは相当にハードだ。かと言って、ない袖は振れないというクラブの台所事情もある。実に悩ましい問題だ。

 しかもヴァンフォーレの場合は、ホームゲームを小瀬(JIT リサイクルインク スタジアム)で開催できないという、これまた特殊な事情もある。

「ACLの規定を満たしていない点は主に3つありました。ひとつは、背もたれ付きの独立シートが5000席以上必要になりますが、それがないこと。それと、1800ルクス以上の照明設備がなく、VIPラウンジもない。そこで甲府での開催を諦め、静岡のエコパ、東京の味の素スタジアム、国立競技場を候補として協議した結果、金銭的なところでは最も高額になりますが、クラブのロマンを追求しようということで、国立開催を決めました」

 いやはや、J2の地方クラブがACLを戦うのは、想像以上に大変だ。そんなハンデを乗り越えて、ヴァンフォーレは初めてのアジアの戦いに挑んでいるのだ。

 果たして、国立競技場の使用料は小瀬と比べてどれくらい高額なのだろうか。単純に考えても、それなりに集客できなければ、せっかくACLに出場できても収支的には大赤字になりかねない。そんな事態になれば、ACL出場の価値も薄れてしまう。

 そもそも、ヴァンフォーレにとってACLは金銭的にプラスになるのか、マイナスになるのか。そこで、最も気になるお金の話をクラブの経理担当者に聞くことにした。

(後編「ACLにはどれくらいのお金がかかるのか」へつづく>>)

プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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