J2ウォッチャー平畠啓史が今季推している5人。「一番10番に相応しい」「J2でも案の定やばい」「本当に全部うまい」選手とは (3ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • photo by Getty Images

【キックがすごい。クロスの判断がすばらしい】

久保藤次郎(MF/藤枝MYFC)

 期待というか、もう今めちゃくちゃ活躍しているのが藤枝MYFCの久保藤次郎選手。久保選手は、僕はJ3の時からマジでやばい選手だなと思っていました。大学生で特別指定選手として出場していた時もすごいプレーを披露していました。

 J2にあがってきても案の定やばいですね。まず基本のキックの凄さ。僕は『隠れ"隠れ9番"』って呼んでます。シュートが本当にうまいんです。シュートがうまいといってもポジションは右のウイングバックなので、いつもシュートエリアにいるわけじゃないんですよ。でもシュートを打てるエリアに入った時のキックのすばらしさは、ちょっと半端ないですね。

藤枝MYFCの久保藤次郎藤枝MYFCの久保藤次郎この記事に関連する写真を見る 久保選手は右のワイドなので、もちろんドリブルでもボールを運べます。こういうポジションでドリブルする人ってクロスやシュートを打つ前にドリブルで仕掛けて相手をかわすことに酔いしれる選手が結構いますよね。そういう選手も僕は嫌いじゃないですが、久保選手は、次に何かをするために必要だからドリブルを仕掛ける。

 久保選手がすごいのは、ドリブルを始めても相手DFが前にいる時に、相手を抜かずにクロスをあげるんですよ。それも試合中何度も。ドリブルで抜く必要がないんだったら別に抜きませんよと。そこの判断がすごくすばらしいなと思うんですよ。

 ウイングプレーヤーって、どうしても相手をかわしたくなるんですよね。かわすと気持ちいいですから。でもこの選手はかわせるけどかわさずに、あげたほうがいい時はクロスを入れる。そこの判断力のすごさですよね。だからアシスト数もものすごく多くなっているんだと思います。

 横浜F・マリノスとかでもよくあるシーンですけど、まず縦にドリブルで突っかけたあとに直角にグラウンダーのパスをゴール前に入れたりするじゃないですか。久保選手も真っ直ぐ縦に行ったら、相手のDFラインが下がる。そこで、直角に横にパスを入れるから、あとからちょっと遅れ気味に入ってきた中の味方選手がシュートを打てるスペースがある。

 いわゆる弓なりのクロスをあげちゃうと、中でどうしても競り合いになってしまう。マリノスの水沼宏太選手も、藤枝の久保選手も、(ゴールラインと)平行に入れたほうが中の選手がシュートを打ちやすいから、あえて平行に入れていると思うんですよね。

 ただ久保選手はシュートもうまいので、もしかしたらシャドーとかでもめちゃめちゃ活躍するんじゃないでしょうか。ポテンシャルが高いので、右のワイドの仕事もこなせてしまう。でも多分もっとポテンシャルがあるから、ほかのポジションを含めいろいろできると思いますね。

 あと、久保選手のもう一つのすごさが体の強さです。プロフィールを見ると167cmって書いてあって、プロの世界ではめっちゃ小さいじゃないですか。だけど何回見ても「ホンマは167cmじゃないんじゃないの?」って思います。それぐらい実在する久保選手は大きく見えるのも、彼のすごさではないかと思っています。

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