低迷するレイソル「井原カラー」は降格圏脱出へカンフル材になっているのか
柏レイソルのネルシーニョ監督が成績不振により退任となったのは、5月17日のこと。13節終了時点でわずか2勝と低迷するチームを引き継いだのは、井原正巳ヘッドコーチである。
初陣となったのは14節、ヴィッセル神戸との一戦だった。前半のうちに先制されながらも後半に攻勢を仕掛け、相手のオウンゴールを誘発して首位チームから勝ち点1をもぎ取っている。
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【攻撃陣がようやく本領発揮】
まずまずのスタートを切ったかに思われた。だが、翌15節の川崎フロンターレ戦ではいいところなく0-2と完敗。ほとんど攻め手がなく、勝機は皆無に近かった。
それでも選手たちは、前体制からのポジティブな変化を感じ取っていた。
ディフェンスリーダーの古賀太陽は「井原さんはビルドアップだったり、しっかりつなぎながら前進していくことにトライしようと言ってくれています。そこは大きく変わった部分。今日(川崎戦)もビルドアップのミスから失点しましたけど、トライすることはやっていきたい」と前向きな言葉を発していた。
その指揮官の姿勢は、16節の北海道コンサドーレ札幌戦でも表れており、アディショナルタイムの失点に屈し4-5で敗れたものの、一度は2点差を追いつく粘りを披露。さらに王者・横浜F・マリノスと対戦した17節は、退場者を出した影響から土壇場の2失点で逆転負けを喫したが、3-4と2試合連続で撃ち合いを演じている。
ネルシーニョ体制下では13試合でわずか8得点と「ゴール欠乏症」に悩まされていたチームが、井原監督就任後はたった4試合でその得点数に並んでいる。エースの細谷真大をはじめ、マテウス・サヴィオ、小屋松知哉ら攻撃に違いを生み出せるタレントが揃うチームがようやくそのポテンシャルを発揮した印象で、リスク排除型だった前体制からの変化は明白だった。
もっとも横浜FMに敗れたことで、柏は最下位に転落。シーズンも残り半分となった時点で、この順位は看過できるものではない。内容が良くなったとはいえ、井原監督就任後はまだ勝利を挙げられておらず、しかもうち2試合が最終盤での失点で敗れたことを考えれば、トライしづらい状況であることも確かだろう。柏が置かれる立場が、理想の追求を難しくしているのだ。
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プロフィール
原山裕平 (はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。