香川真司が10代以来のボランチで原点回帰...思い出すのは「恩師」レヴィー・クルピ監督の言葉 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

【18歳の香川をトップ下に抜擢】

 ただ、奥埜が思いきって前に飛び出せるのは、香川の気の利いたサポートがあったからにほかならない。

「今日は中盤3人が攻守において、いい距離感でできていた。あの得点シーンはまさにそのとおりで、僕が落ちながらコントロールして、力とオク(奥埜)をうまく前に行かすことができた」

 いずれも経験豊富な3人の補完性の高いプレーが、今季より4-3-3に取り組むC大阪の肝であり、この決勝点はまさにその成果が表れたシーンと言えるだろう。

 そして攻守両面でそれぞれが補完し合うためには、運動量が求められる。13km以上を走った奥埜の運動量はまさに驚異的だが、香川もそれに次ぐ12km超えと、34歳のベテランはピッチを所狭しと走り回った。

「走れないと自分のよさが生きないので。初心に戻るじゃないけど、今のベースは走ってナンボですから。攻守においてもっとクオリティを上げていけたら、このチームにとっても非常にいいモノをもたらせると思います」と、さらなる走力向上を誓っている。

 攻撃特化型のかつての香川を思い起こせば、驚きの変貌である。

 チームが求めるスタイルに合わせるのは当然ながら、キャリアを積むなかで自らのスタイルが変化してきたこともあるだろう。トップ下では密集地帯をかい潜るクイックネスが求められるが、年齢を重ねるなかでその能力が落ちてくれば、ポジションを下げていくことは珍しくはないものだ。

 そもそも、香川はボランチの選手だった。当時スカウトだった小菊昭雄監督がFCみやぎバルセロナユースで見出したのは、ボランチとしてプレーする香川の姿だった。

 しかし香川は、プロの世界で攻撃的な選手として開花する。18歳の彼をトップ下に抜擢したのは、当時C大阪を指揮していたレヴィー・クルピ監督である。ボランチにこだわりを持つ香川は当初、納得していない様子だったがクルピ監督は、こう諭したという。

「真司はボランチでもプレーできるだろう。でも、まだ若い。その若さを活かし、攻撃的なポジションでどんどん仕掛けていくべきだ。そしてこのポジションをやることで、将来ボランチをやりたいという時に、プレーの幅はひと回りもふた回りも広がっているだろう」

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