「川崎フロンターレの13位」は欧州ではあり得ない現象 凋落の原因は火を見るより明らかだ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

【ベストメンバーがわからない】

 かたやアジアチャンピオンズリーグ(ACL)は、近年、賞金が急増していると言っても、優勝チームで最大500万ドル(約6億5000万円)に届かない。Jリーグ優勝の先に特段明るい未来が待ち受けていない。経営者には妙味があるように映らない可能性がある。2017年にACLを制した浦和レッズ、2018年にACLを制した鹿島アントラーズの、その後のパッとしない戦いぶりからも、前向きになれない様子がうかがえる。

 川崎の話に戻れば、今季は選手のケガが輪をかけた。前述した大島だけではない。得点源のレアンドロ・ダミアン、小林悠、守備の要ジェジエウ、左SBの登里享平、左SB兼CBの車屋紳太郎......と、枚挙にいとまがない。

 ベストとおぼしき11人がスタメンを飾る機会がない。そうこうしているうちに誰がベストなのかわからなくなっている。それが高次元の話なら、競争が激しいという話になるが、川崎のような低次元の場合は危ない。チーム崩壊寸前の状態を指すのではないか。ここまで多くの選手がコンディションを崩すチームも珍しい。

 むしろここまで堪えてきた鬼木監督に拍手を送りたい気分だ。最後の2回の優勝は鬼木監督でなければ果たせなかったものと考える。鬼木監督にはよりよい環境で采配を振らせいたい(たとえば日本代表監督とか)と考えるのは、筆者だけではないはずだ。川崎の監督を今季このままやり続け、5位以内の成績でフィニッシュさせたら、まさにスゴ腕だ。

 川崎がこれからどこまで巻き返すか。さまざまな意味で目を凝らしたい。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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