「川崎フロンターレの13位」は欧州ではあり得ない現象 凋落の原因は火を見るより明らかだ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

【退団選手と加入選手のバランスの悪さ】

 昨季をもってチームを離れた谷口彰悟の代役として獲得したのは大南拓磨だ。評価するならば中の上。高い経験値を備えた谷口を超える選手ではない。戦力ダウンを最小限に止める補強だった。放出した選手と加入した選手のプラスとマイナス関係を相殺すれば、マイナスであることは明白だ。

 右SBとして2017年、2018年シーズンに連続してリーグのベスト11に輝いたエウシーニョが、翌2019年シーズン、チームを去った時、そこがそのまま穴になった。4位で終えた大きな原因とされた。だがその翌年の2020年シーズン、湘南ベルマーレから獲得した山根視来がハマり役となると、川崎は再び上昇。2020年、2021年シーズンを連覇した。それこそが最大の要因となった。

 だが、それが代役獲得の最後の成功例となった。以降、出ていった選手と加入した選手のバランスは悪化の一途を辿る。ここ1、2年は特に目に余る。

 他チームに追い越されたと言うより、過去の自チームに遅れを取っている。傍目から容易にわかるほど、かなり大きく、だ。

 最後の優勝となった一昨季あたりから、現在の姿は読めていた。やりくり上手な鬼木達監督の采配で、なんとか持ちこたえていたが、ここにきてそれも限界に達したようである。神通力もここまで、という感じである。

 川崎の現状にそれほど驚く気は湧かない。来るべき時が来たという印象だ。何よりクラブの首脳陣のやる気が伝わってこない。川崎には優勝賞金に加え、2017年から始まったDAZNマネーによる分配金も入っている。先述の4人が欧州に渡った際に発生した移籍金も少なからずあるはずだ。Jリーグの盟主であり、お金持ちクラブでもあるのに、選手の獲得に消極的。この矛盾、バランスの悪さ。繰り返すが、欧州ではあり得ない話だ。

 欧州にはチャンピオンズリーグ(CL)がある。国内リーグを制すれば、欧州を舞台にそれ以上の相手との戦いが待ち受ける。金額的には本大会出場を決めただけで1560万ユーロ(約21億円)が各クラブの懐に入る。グループリーグ1勝につき280万ユーロ、引き分け93万ユーロ、ベスト16進出で960万ユーロと続き、優勝すれば最大で計8510万ユーロ(約120億円)を手にすることができる。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る