「タイトル獲得へフロンターレを倒さなければ」...シャイな知念慶が殻を破って「叫び、吠えるアントラーズの男」になる

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Kyodo News

愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集
知念慶(鹿島アントラーズ)インタビュー後編

◆前編はこちら>>先輩・家長昭博から届いた「心に響くメッセージ」

 今季、完全移籍で加入した鹿島アントラーズのクラブハウスに足を踏み入れ、練習グラウンドに立って感じた空気を、知念慶はこう言葉にする。

「グラウンドに出ると、ちょっとピリついた空気がありました。ここで自分はゼロからまた、スタートするのかと思うと、身が引き締まりました」

 練習でもさっそく、その空気感を体感している。

「在籍したチームはどこも練習から球際が激しかったですけど、アントラーズはまたさらにそれを強く感じます。特に(鈴木)優磨のスイッチが入って、練習からチームメイトに対して激しく当たりにいく姿を見ると、なおさら『これが鹿島か』って実感しますよね。

 チームメイトに聞いても、それが日常茶飯事だと言うので、『鹿島の厳しさ』とはこういうことを言っているのかと思いました」

 その熱さを追い求めて、知念は新天地に鹿島を選んだ。

開幕戦でゴールを決めた知念慶(左)と鈴木優磨(右)開幕戦でゴールを決めた知念慶(左)と鈴木優磨(右)この記事に関連する写真を見る「アントラーズでプレーする以上、戦術や技術の前に、情熱が必要だと思っています。川崎から加入したからといってうまく見せようとするのではなく、自分の持ち味でもある泥臭さを出していきたいと思っています」

 知念自身も「ゼロからのスタート」と表現したように、新しい環境に飛び込めば、イチから自分の性格やプレーの特徴を周りに伝え、知ってもらわなければならない。

「率直に言えば、もちろん移籍の難しさも感じています。フロンターレ時代のように、完全に自分の特徴を出しきれているかと言われたら、まだまだなところはどうしてもある。

 でも、そうした葛藤や毎日すら、今は楽しい。チームがうまくいっていない時には、自分自身がどうしたらもっとチームが機能するかを考えますし、自分がもっと活きるには、活かしてもらうにはどうすればいいかも考える。

 今まではどちらかというと、自分は見ていて、みんなについていくだけでしたけど、今はチームのために、自分から動かなければいけない状況になったことで、すぐに行動に移すようになりました。そこは、自分のなかでひとつ壁を越えようとしている感覚があります」

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著者プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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