清水エスパルス復調の立役者・山原怜音は、澤登正朗を彷彿とさせる現在Jリーグ最高の左SB (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

キックの正確さはJリーグでも随一

 その前のサガン鳥栖戦(7月31日、3-3)では2アシストを記録した。まず後半12分、相手の縦パスを自軍エリア内でカット。すかさすドリブルで左のライン際を60メートル強、疾走した。競りかけてきた相手をまとめて2人、縦にかわしながら。その折り返しがMF白崎凌兵のゴールを誘ったのだが、このプレーなどはもはや十分、日本代表級と言えた。

 もう1本は後半41分、チアゴ・サンタナに送った右足の正確なロングパスだ。2-3だったスコアを3-3の同点としたアシストである。1本目が0-2のスコアを1-2にしたアシストだったので、山原こそが、チームが0-2の劣勢から3-3の引き分けに持ち込めた立役者、マン・オブ・ザ・マッチだった。

 山原を語る時、特筆すべきポイントは大きく分けて2つある。まずは右足の正確なキックだ。正確そのもので種類も豊富。パンチ力もある。現在のJリーグで、一番優秀なプレースキッカーだと筆者は見る。

 前節の柏戦では、山原がCKからチアゴ・サンタナのヘディング弾をアシストした。これぞまさにピンポイントクロスと言いたくなる針の穴を通すようなボールだった。したがって清水にとってCKは、最大のチャンスになっている。強ヘッダーはチアゴ・サンタナ(184センチ)だけではない。立田悠悟(191センチ)もいれば、鈴木義宜(184センチ)もいる。こうした決め手は本来、降格ラインをさまようチームにはないものだ。現状、清水は降格ラインと6ポイント差しかないものの、楽観視したくなる理由だ。

 山原のキックに話を戻せば、浦和レッズ戦(7月16日、1-2)では、直接FKも蹴り込んでいる。ゴール正面からズドンとGK西川周作の頭上を打ち抜いた、目を見張るような豪快な一撃だった。

 先述の鳥栖戦でも、衝撃的なキックを披露している。逆サイドで構える右SB片山瑛一に、優に50メートル以上はあろうかというロングキックをライナーで、寸分の狂いなく決めている。片山の2メートルほど右には相手のマーカーがいた。普通ならそこには絶対に蹴らない状況だった。だが、キックの正確性に自信があるのだろう、山原は涼しい顔でスパンと蹴った。しかも片山のマーカーから離れていくような、ほんの少しスライスがかかった弾道で。びっくり仰天とはこのことだった。

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