ヴィッセル神戸が泥沼に足を踏み入れた理由。最下位脱出へ三木谷会長の剛腕にも注目 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「イニエスタシフト」にも不信感が

 ロティーナの言葉は正論だが、"わかっていてもどうにもならない"状況にある。

 浦和戦も、チグハグさが目立った。単純なパスのずれが起き、まともに敵陣にボールを運べない。一方でサイドを簡単に崩されてしまい、シュートまで持ち込まれると、イニエスタが味方を厳しく叱咤していた。

 今シーズンも、神戸は「イニエスタシフト」を敷いている。昨季は前半戦までは古橋亨梧が活躍した流れに恵まれて成功を収めたが、後半は不調が明らかで、予兆はあった。現在は結果が出ず、「イニエスタシフト」にも不信感が滲み出している。前からの守備で敵ゴール近くから攻撃を始めるほうが効率的だが、イニエスタがいる限り、それは難しい。結局、一度引いて陣形を構えるしかなく、そうなるとボールを奪っても低い位置からのスタートになる。前線にスピードスターがいるわけでもなく、押し込まれ続け、攻守にストレスが生まれているのだ。

 ただ同時に、何もないところからチャンスを生み出せるのはイニエスタという事実がある。その矛盾を消化できていない。

 浦和戦ではイニエスタがベンチに下がってから、チームはアグレッシブにプレスをスタートさせたが、練度が低いためにはまらなかった。むしろ、背後を取られることが増えた。守りにおけるミスの連続で、FKから失点を喫したのだ。

「チームの意思疎通ができていないところがあった」(酒井高徳)

 選手たちが苦悶するのは当然だ。

 前回の神戸の記事でも書いたが、昨季とのもうひとつの違いはトーマス・フェルマーレンの退団・引退だろう。その穴が埋まっていない。ベルギー代表DFは正しいポジション、正しいタイミングを見本とし、周りのプレーを輝かせることができた。迅速にパスをつけ、的確にカバーし、ここぞという場面では自ら仕掛けるディフェンスもできていた。

 とはいえ、いくらフェルマーレンの不在が痛手だとしても、ここまで低迷する戦力ではないだろう。

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