上田綺世はラウルと同じ"論理的思考"のストライカー。「小心者」だから「常に考えてサッカーをしている」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「常に考えてサッカーをする」

 順を追って考える。そのひとつひとつの作業には、過程として成功と失敗がつきまとう。それが自身を緊張させる。

 ストライカーの場合、失敗を引きずると次の失敗を誘発することがある。それだけに、失敗を悔やむよりも「次に成功してありあまる称賛を得られる」という楽観的メンタリティが好まれる。直感的な行動パターンと言えばいいだろうか。

 しかし、上田は思考で向き合う。考えることなしに、答えに辿り着かない。

「僕は常に考えてサッカーをしています。茨城の小さな世界だけで生きてきましたが、そこでも他人を観察して、なんとなくではありますけど、考えを確立してきました」

 論理的思考で大成したストライカーもいる。

 1990年代から2000年代にかけ、レアル・マドリード、スペイン代表で活躍、欧州最高のストライカーのひとりであるラウル・ゴンサレスは論理的思考の人だった。幼い頃から居残り練習で、いくつものシュートパターンをコーチと仕上げた。本能に頼らず、体にロジックを覚えさせている。また、週末は各カテゴリーの試合を1日中、見て回った。それぞれのストライカーの癖、パサーとの呼吸、ディフェンスの対応など、「自分がそこにいたら」と、いくつもの場面を疑似体験した。日本で言えば、中学1年生の頃から思考を重ねる日々だった。

 膨大なデータを取り込み、練習でパターン化し、実戦でその精度を高める。「同じ場面は二度起こらない」。それはサッカーの本質だが、一方で、人工知能が最も似た成功例をはじき出すように、オートマチックに最善の選択を下せるようになるのだ。

「僕はシュートを打つ時、選択肢を消去法で消していきます。先(の映像)を見るというか」

 上田はそう語っていた。

「例えば、左サイドの背後に出たボールで、GKと1対1に近い状態になるとします。僕の選択肢はだいたい4つ。ファーにゴロ、ニア、ループ、かわす。GKを見た時、瞬間的にニアは当たる、ループできない......バババッと、写真が頭の中に4枚あって弾かれるんです、たぶん、0.2秒くらいのなかで。それが自動的に起きればいいんですけど......」

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