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荒木遼太郎、松木玖生に続け。パリ五輪世代がJリーグでじわじわと高める存在感 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

三笘薫とは違うリズムのドリブル

「Desborde y Gol」

 スペインで「崩しとゴール」を意味するビジョン、技術は直結したものだが、それが体に染みついている。ボールを持っているときも、持っていないときも、ゴールが意識のなかにある。

 後半40分、宮城は橘田健人からのすばらしいサイドチェンジを受けると、右足アウトサイドの完璧なトラップで持ち出し、シュートに持ち込んでいる。相手ディフェンスと対峙しても恐れることがなく、ボールを受けた時の重心も低いため、容易に飛び込ませない。敵が足を出してきても、右足を躊躇なく振っている。簡単なプレーに映るが、これは天性の素質と鍛錬の賜物と言える。シュートそのものはインパクトがズレ、右ポストをかすめるように逸れていったが、一瞬でゴールの気配を作り出した。

 宮城はひとりでも守備陣形を崩し、ゴールを狙える。それは単純に才能と言える。三笘薫とはまた違ったリズムのドリブルで、シューターとしてどこまで飛躍できるか。昨シーズンは、ワールドクラスのミドルを放り込んでいる。

 左利きのアタッカーとしては、ガンバ大阪の中村仁郎を推したい。日本人では、マジョルカの久保建英に一番似たタイプだろう。バルサの下部組織の攻撃的選手にいそうな空気がある。相手の逆をとる、タイミングを外すというアクションを、息を吸って吐くようにできる選手で、そこにスピードと技術が身についている。左足でのボールタッチも天分で、下がって受け、プレーメイクに関われるが、ゴールまでのビジョンもある。

 ガンバでは2トップの一角でプレーしているが、適性ポジションが見つかったら、一気に飛躍できるだろう。

 ただし、現時点では90分間は厳しく、チームのプレーがうまくいかないと自身も影響を受ける。先発しながら後半15分に退いた直近の柏レイソル戦はその典型だった。ただ、失敗後に改善が見られる選手で、ユース、U-23では自分への不甲斐なさから涙を流した。クリスティアーノ・ロナウドがそうだったが、感情量の豊富さは成長の起爆剤と言える。

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