補強ゼロで貧打に苦しむ古豪サンフレッチェ。ドイツ人監督が見出したストロングポイントは? (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

開幕5試合でわずか3得点

 スキッベ監督は3月上旬に入国し、第3節の神戸戦から指揮を執っているものの、キャンプ期間に直接指導できなかったことでスタイル構築の遅れにつながった。

 もっとも広島は、開幕のサガン鳥栖戦から昨季と異なる姿を見せていた。ドイツ人監督が目指すのは、高い位置でボールを奪い、素早く攻撃につなげるサッカーだ。遠隔指導によって伝えられたスタイルは、完成形からは程遠かったとはいえ、選手たちのプレーからは遂行しようという意思がうかがえた。

 ともに敗れたとはいえ、FC東京戦でも川崎戦でも絶え間なくハイプレスを仕掛け、相手を押し込む時間も長かった。ただし、内容は悪くなくとも結果が伴わない。その原因は湘南戦でも浮かび上がっていた。

 前半は同じようなスタイルの湘南のプレッシャーを受け、なかなかリズムを掴めなかった。だが、次第に相手を押し込む時間が増え、高い位置でのボール奪取からシュートに持ち込む機会が増加した。

 ただし、そのシュートシーンは独力で生まれたものがほとんど。早く攻めようという意識が強すぎるのか、押し上げを待つ前にエリア外から放たれたシュートは、日本代表にも名を連ねる湘南の守護神、谷晃生の牙城を崩すには至らなかった。

 迫力ある前線からのプレスと、奪った瞬間に前へと向かうプレー強度の高いスタイルである一方で、言い方を変えれば落ち着きのないサッカーとも表現できる。独力で決めきれる強烈なストライカーがいれば結果につながるだろうが、補強ゼロの広島にそのようなタレントは不在。5試合でわずか3得点という貧打の原因は、奪ったあとの攻め筋に見出せた。

 一方で、スキッベ監督のもうひとつの狙いはサイド攻撃にある。こちらには十分な可能性が感じられた。先導するのは藤井智也と大卒ルーキー満田誠の両翼だ。スピードあふれるドリブルで縦への推進力をもたらす右の藤井と、果敢に仕掛けて相手を出し抜き、中にも切れ込める左の満田。両者のパフォーマンスが今の広島のストロングポイントとなっている。

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