補強ゼロで貧打に苦しむ古豪サンフレッチェ。ドイツ人監督が見出したストロングポイントは?

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 スタートダッシュの成否がその後のシーズンに大きな影響を与えることは、あらためて述べる必要もないだろう。過去のデータを紐解いても、その事実が浮き彫りとなる。

 昨季の降格4チームの開幕5試合の結果を見ると、徳島ヴォルティスは2分3敗、ベガルタ仙台は1分4敗、横浜FCにいたっては開幕5連敗と大いに苦しんだ(初勝利は第14節まで待つことに)。大分トリニータは1勝2分2敗と降格チームのなかで唯一勝利を手にしたものの、スタートダッシュに失敗すれば「残留争い」という容赦ない現実を突きつけられることになる。

今季広島を率いるドイツ人のミヒャエル・スキッベ監督今季広島を率いるドイツ人のミヒャエル・スキッベ監督この記事に関連する写真を見る 2014年のガンバ大阪のように、序盤につまずきながらも驚異のV字回復を見せ、優勝を成し遂げた事例もあるが、それはあくまでもレアケース。「34分の5」と考えればまだまだ巻き返しは可能と思えるのだが、そのハードルは思いのほか高いものなのだ。

 今季、開幕5試合を終えて未勝利だったのは、北海道コンサドーレ札幌、サンフレッチェ広島、湘南ベルマーレ、ヴィッセル神戸の4チーム。そのうち、消化試合数がふたつ多い神戸はすでに監督交代を断行し、取り返しがつかなくなる前に手を打っている。

 迎えた第6節、湘南と広島の未勝利チーム直接対決が行なわれた。どちらが先に勝利を手にできるのか。今季を占ううえでも重要な一戦だった。

 湘南は昨季途中から指揮を執る山口智監督の下で、継続路線を進む。一方の広島はドイツ人指揮官のミヒャエル・スキッベ監督を招聘し、新たなスタイルの構築を目指している。

 しかし今季の広島は、昨季は11位にとどまりながら、実質補強はゼロ(ルーキーとレンタルバックのみ)。さらに新型コロナの影響で新監督の入国も遅れた。言ってみれば、スタートでつまずく条件は揃っていたのである。

 案の定というべきか、開幕3試合連続ドローと勝ちきれず、第4節にFC東京、第5節には川崎フロンターレに敗れて2連敗。5試合を終えて3分2敗と大きく出遅れた。

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