FC東京スペイン人指揮官の改革の行方。バルサ路線は「組み立て中」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

昨季までと同じ得点パターン

「ゲームを支配し、攻撃する、というのが監督のゲームプランですが、立ち上がりから、相手の守備は組織的で、難しい試合になることはわかっていた。そこで"戦う"ということを徹底しました」(FC東京・アダイウトン)

 前半終了後、アルベル監督はエンリケ・トレヴィザンを下げて木本をセンターバックにし、ボランチに三田啓貴を、右SBに長友佑都を交代で入れた。4-2-3-1へのシステム変更は、自明の理と言えるだろう。

「(ボールをつなぐための)バリエーションやアイデアは不足していたかもしれません。(ボールを受けるために)立ち方を変えるなどは柔軟にやるべきで、どうやるべきか、迷っていたところはあった」(FC東京・森重真人)

 だが後半も、FC東京はリズムをつかむことはできなかった。次第に球際の攻防で劣勢を強いられるようになり、立て続けにミドルシュートを打ち込まれた。守備のガバナンスまで乱れ、敵のエースであるジュニオール・サントスがイージーにボールを失ってくれた(交代間際の突破はすさまじかったが)ことで、難を逃れていたにすぎない。

 それでもFC東京は底力を見せた。60分、やや遠めのFKを取ると、三田が左足で狙い、森重真人がすばらしいヘッドでゴールに叩き込む。さらに61分には敵陣でパスカットし、最後はアダイウトンが強烈に仕留めた。その後、1点を返されたものの、最後は2-1で勝ち切った。

 粘り強く守って、個の力で局面を制し、セットプレー、ショートカウンターで得点する、という形は、長谷川FC東京の十八番だ。

「広島はリスクをともなった守備をしてきた。そこで我々がマークをはがして打開することができていれば、決定的な形を作ることができていただろう。それがうまくできなかったことで、試合を通じてコントロールをつかみきれないことにつながった」(アルベル監督)

 完成度が低いのは、プレシーズンでコロナ禍により十分にトレーニングマッチをこなせず、いつもより開幕も早いという条件もあるだろう。しかし、スペクタクルなゲームの実現は簡単ではない。そもそも在籍プレーヤーのキャラクターが昨シーズンまでのサッカーに合っているし、戦術を牽引できるような突出した選手が何人か必要だろう。

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