「ハリルはプレゼン資料を用意していた」。霜田元技術委員長が見た歴代日本代表監督の素顔

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

Jリーグ2022開幕特集
霜田正浩(大宮アルディージャ)インタビュー(3)

 大宮アルディージャを率いる霜田正浩監督は、日本サッカーにおける「強化」という仕事を極めたに近い人物である。その語学力と人脈を生かした交渉力で、技術委員長として活躍。海外のマーケットに飛び込み、外国人の代表監督を引っ張ってきた。

「今までやってきた経験を今日に生かせるか。(経験は)持っているだけじゃ意味がない。過去にどうだったか、なにをしたか、よりも、昨日までやってきたことを今日に生かさないと明日はない。今のところ、おかげさまでしぶとく生きてます(笑)」

 霜田監督は冗談めかして言うが、その経験が無駄なはずはない。アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチなど過去の代表監督たちと間近に接し、学ぶことは少なくなかった。悪戦苦闘しながら、自身が一番望んでいた監督になったのだ。

「負けたら悔しいけど、(監督は)天職だと思っているから、やめたいと思ったことはないよ」

日本代表の外国人監督招聘に関して中心的役割を果たしてきた霜田正浩大宮アルディージャ監督日本代表の外国人監督招聘に関して中心的役割を果たしてきた霜田正浩大宮アルディージャ監督この記事に関連する写真を見る――技術委員長として、トップの外国人監督たちと交渉契約し、ともに働いた経験はどう生きていますか?

「学んだことはたくさんあります。たとえば、ヴァイッド(ハリル)は真正直な男だったから、選手にも真正面から向き合っていた。そこは(監督になって)自分でも取り入れている。"選手に好かれよう"じゃなくて、耳に痛いことであってもしっかり伝えないといけないな、と。第三者から入れさせるのではなく、僕が直接、伝える。フェイス・トゥー・フェイスって大事で」

――ハリルはやや気難しさが表に出ました。

「もちろん、ヴァイッドが日本人っぽく気を遣えば、もっとラクに仕事ができていたかもしれないし、その点ではへたくそだったのかもしれない。でも、"人間として伝わる"というのは現場で感じていた。いけ好かないかもしれないけど、"目の前でここまで言ってくれるのか"と、意気に感じた選手はいた。もちろん、嫌な選手もいるだろうけど、言わないと伝わらないんだよ。そこは暗黙の了解じゃないか。ヴァイッドは乗り越えてほしい選手にこそ、"なんで外したのか"を説明して向き合っていた。その愚直さは響くものがあるかな、と」

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