大宮アルディージャ指揮官・霜田正浩の監督論と目指すサッカー。「これ」をやると選手は伸びる

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

Jリーグ2022開幕特集
霜田正浩(大宮アルディージャ)インタビュー(2)

「サッカーがうまくなるサッカーをやりたい、と考えています。やっている選手が楽しくて、見ている人が幸せで......。"サッカーをやらされている"なんて、つまらないから」

 大宮アルディージャを率いて2年目になる霜田正浩監督は、その信条を語る。その人間性、サッカー論は今やチーム内で強い求心力となっている。その独自のサッカー定理とは――。大宮の新シーズンを展望しつつ、「監督論」に迫った。

ベルギーでのコーチ経験やベトナムでの監督経験もある霜田正浩大宮アルディージャ監督ベルギーでのコーチ経験やベトナムでの監督経験もある霜田正浩大宮アルディージャ監督この記事に関連する写真を見る――昨年、ベトナムのサイゴンFCでは3連敗して解任され、その後に大宮の指揮を執ったわけですが、いろんな経験が監督として成熟する糧になっているのでしょうか?

「ベトナムでは、ものすごく期待してもらってチームを引き継ぎました。でも、チームは中位の戦力で、レギュラーの3、4人がケガをして3連敗。選手もコーチも"まだ全然大丈夫"って感じだったけど、メディアの攻撃にオーナーが『もう耐えられない』と。それでコーチが監督に昇格した。クビはいいことではないけど、監督って、それもあり得る。契約した瞬間、解任までどれだけ長くできるか。ベトナムの経験は次に生かさないとね。

 たとえば英語でのミーティング。母国語ではない言葉で選手の気持ち掴む、鼓舞する。言葉が流ちょうではなくても、伝わるところはある。今は日本語だからこそ、どんな言葉が刺さるのか、言葉のチョイスも考える。勉強することばかりです」

――霜田さんは論理的な指導者で、寛容に見えます。

「馬鹿正直だなと思うことはある(笑)。でも性善説かもしれないけど、選手やスタッフを信頼しないと、信頼してもらえない」

――懐の深さは、ブラジルにいたことも関係しているのでしょうか?

「鈍感力はあるかもね(笑)。でも理不尽なことばかりだったからこそ、これを許す、これは許せない、その基準は持つようになったかな。何でもあり、ではない。ただ、何か起きてもベクトルを自分に向けて、理由を考える。たとえば自分のチームの選手が決定機をミスしたら、『決めろよ』と瞬間的には思う。でも終わったあと、その感情を引きずっていると何も生まない。それより、どうやって決められるかを考える。選手にも、『責任転嫁せず、自分にベクトルを向けろ』と言っている」

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