浦和レッズ、セレッソ大阪...外国人指揮官が重用するJリーグ「陰の功労者」たち

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO SPORTS

Jリーグ2022開幕特集
チームを支える「陰の功労者」たち(後)

 チームを担う主役的選手というのがいる。「エース」という表現でもいいだろう。敵の矢面に立って戦い、チームの顔として振る舞い、その目立つ活躍は華々しい。

 一方で、戦いを支える「Jugador del Equipo」がいる。スペイン語で「チームプレーヤー」。チーム全体の歯車を回すために働き、周りの選手のプレー水準を高め、自らもチームに貢献する。チームを集団として機能させるために欠かせない選手だ。主役だけで戦うことはできない。

 2022年のJリーグ、注目すべき「Jugador del Equipo」とは?

 今シーズン、古巣に戻ることになった藤田直之(34歳、サガン鳥栖)は、決して派手なMFではない。ひと言でいえば、気が利くということになるだろうか。相手を圧倒するフィジカルがあるわけでも、芸術性に近いテクニックやビジョンがあるわけでもない。出し手に対して顔を出し、ボールを引き出し、それをつなぎ、運ぶ。単純明快にボールを動かすことで、味方にアドバンテージを与える。守る時も同様で、カバーであれ、チャレンジであれ、周りと補完し合いながらチーム力を上げられる。

セレッソ大阪から古巣サガン鳥栖に復帰したMF藤田直之(写真は天皇杯準決勝)セレッソ大阪から古巣サガン鳥栖に復帰したMF藤田直之(写真は天皇杯準決勝)この記事に関連する写真を見る「ナオ(藤田)はチームを回すことができる欠かせない選手だよ。初めて見た時は動きすぎていたが、すぐに取るべきポジションを取れるようになった。チームに『決して売りに出さないでくれ』と頼んだのだが......」

 フアン・マヌエル・リージョはヴィッセル神戸を率いていた時、そう言って藤田のチームプレーヤーとしての資質を高く買っていた。神戸は同じポジションの山口蛍を獲得し、オフの間に藤田を手放してしまった(セレッソ大阪へ移籍)。リージョは「何度も念を押したのに」と、不満を隠さず、悔しがっていた。

「チームに絶対、必要な選手」

 セレッソ大阪で、そう言って藤田を重用したのが、リージョと同じスペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督だった。ロティーナはセレッソを率い、各選手のポジション的優位を目指し、それをチームモデルとし、枠組みを成熟させ、そこで選手の成長を促し、再びチーム力に変換した。その中心に置いたのが藤田だった。

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