川崎フロンターレ・鬼木監督が目指す2022年のサッカー。5レーン、ポジショナルプレーに「こだわりはない」 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

【選手と一緒に作り上げた4-3-3】

――話は変わりますが、フロンターレのサッカーは立ち位置によって相手やボールを動かしているように、世界のトレンドを加味してもいますよね。一方、鬼木監督のコメントを聞いていると、たとえば、5レーンという単語やポジショナルプレーといった言葉を発することはまずないように思います。あえて用いていないところもあるのでしょうか?

「特に意味はないのですが、そこにこだわりがないからですかね(笑)。おそらく、わかりやすいのでみなさんは使っているのだと思いますが、個人的にはそこにしばられたくはないと思っています。ポジショナルプレーについては、自分のなかではそういうサッカーをしているとは思っていないですし、5レーンにしても、よく同じレーンに人が重ならないようにするとも聞きますが、僕はむしろ重なったほうがおもしろいと思う時もあります。

 だから、そういう意味で用語にこだわりがないんです(笑)。それに、再現性を求めるサッカーがいいと思う時もあれば、自分にない発想を選手たちが表現してくれると、それがおもしろいと思う時もある。だから、何かにしばられないということは、自分のなかでは大切にしている要素かもしれません」

――それで言うと、以前は4-2-3-1を採用していましたが、J1を連覇したこの2年は4-3-3を主に採用しています。システム変更に至った着想はどこにあったのでしょうか?

「2020年シーズンを迎えるタイミングで、選手たちの特徴を考えた時、4-3-3のほうが活きそうな選手たちが多かったんです。あとは、4-2-3-1で3連覇を目指しましたが、勝ちきれない試合が多かったのも理由のひとつでした。勝ちきるためには何が必要か。得点力だよな。それには4-2-3-1よりも4-3-3のほうが、得点力も上がるかもしれないなと。

 ちょうど、2019年にJ1で優勝した横浜F・マリノスも4-3-3を採用していて、リバプールやマンチェスター・シティも同様のシステムでした。それを見て、自分自身もおもしろいなと思えたのと、うちの選手たちで試しても合致する部分が多いのではないかと思ったのがスタートでした」

――なるほど。

「そこからはもう、やっていくしかないな、と。やってみないとわからないことや、見えないことも多いじゃないですか。実際、自分の頭のなかでは4-3-3の守備はこんな感じになるだろうと想定していましたが、いざトライしてみたら異なる現象が起こった時もありました。ここが穴になるかもしれないなと思っていたところが、逆にストロングになったことも。

 4-3-3にトライした2020年は、本当にゼロからのスタートだったので、既存の選手たちも、新たに加入した選手たちも、僕らスタッフもああでもない、こうでもないと話し合う機会が増えたんです。その過程において、ネガティブなことはほぼ起きなかった。だから、結局のところ、型にはめ込むのではなく、選手たちと一緒になって作り上げていったのがよかったと思っています」

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