川崎フロンターレ・鬼木監督が目指す2022年のサッカー。5レーン、ポジショナルプレーに「こだわりはない」 (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

【リーグとACLの両方を目指したい】

――そう聞くと、今、フロンターレが見せているサッカーは、フロンターレモデルということになりますね。

「もちろん、海外のチームがやっていることを参考にした部分はありますが、実際にうちの選手たちが守れる幅や攻めるポイントは違うので、フロンターレはフロンターレの形を作り出していこうという考えは、最初から念頭にありました」

――4-3-3を採用して2年。再びリーグ連覇を達成しました。ある程度、手応えをつかんでいるのではないですか?

「うーん。実はその感覚が......」

――ないんですか?

「先日もスタッフとその話をしていたのですが、僕にはその感覚がまだないんです。4-2-3-1を採用していた当時は、選手の特徴や安定感を含め、機能していた理由がある程度わかっていたのですが、今はまだ、これだから強いとか優勝できたと、自分の口からはっきりと言える答えが持てていないんですよね。だから、今言えるとしたら、選手が頑張ってくれたからだと思っています」

――そういう意味では、まだ完成形ではないということですか?

「そうかもしれません。まだまだ、やらなければならないことは多いですからね。ただ、我々も選手たちも、迷いはなくなりつつあるとは思っています。そういう意味では、先ほど言ってくれた形というものが、少しずつ確立できているかもしれないですね」

――話を聞いて感じたのは、フロンターレの強さの秘密は、そうした発見と成長にあるのかもしれないですね。

「間違いなく、現状に満足しないというスタンスは、僕にも選手たちにも、そしてクラブにもあると思います。優勝したからこのままでいいという考えは、誰ひとり持っていないと思います」

――2022年は2度目の3連覇に挑むわけですが、そこへの思いを聞かせてください。

「気持ちとしてはやっとスタートラインに立った思いでいます。というのは、2019年にみんなが3連覇を期待してくれ、自分たちも期待していたなかで、その期待に押しつぶされてしまったところがありました。その反省を活かして、再び3連覇に挑める立場になったので、今回はいいチャレンジができたらと思っています。

 選手たちにも話したのですが、2017年に初優勝した時は、まだ上に追いつき追い越せという形でしかなく、その勢いが2018年の連覇につながっていました。それが2019年にリーグ優勝できなかったことでもう1回、自分たちを見つめ直し、2020年、2021年に再び連覇することができました。当然、プレッシャーはありますけど、今度はそうした重圧も楽しみながらチャレンジしていけるような状況を作り出せればと考えています。

 あとは、リーグとACLの両方を同時に獲得したチームはまだいないですよね。3連覇にACL、選手たちにプレッシャーはかけたくないですが、そこを目指せることを選手たちには幸せに感じてもらえたらと思っています」
(おわり)

鬼木達
おにき・とおる/1974年4月20日生まれ。千葉県出身。市立船橋高校から鹿島アントラーズ、川崎フロンターレでMFとしてプレーし、2006年に引退。その後川崎で長らくコーチを務め、2017年に監督に就任。1年目でクラブ初のリーグタイトルを獲得して以降、J1優勝4回、ルヴァンカップ優勝1回、天皇杯優勝1回の実績を誇る。

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