J2からの「個人昇格」で際立った活躍。近年の移籍トレンドを代表する選手たち (3ページ目)
そして最後に、今季J1に個人昇格した選手のなかから"パリ世代"の中心としても期待される、徳島ヴォルティスのMF藤田譲瑠チマを挙げておきたい。
昨オフ、東京ヴェルディから徳島へ移籍した藤田は、最近の個人昇格組の多くが大卒選手であるなか、19歳という若さで個人昇格を手にした選手である。今季J1のベストヤングプレーヤー賞にも、個人昇格組としては唯一ノミネートされている。
東京V時代の昨季、すでにJ2とはいえ41試合に出場していた藤田は、今季初めてのJ1でも28試合に出場。そのなかには途中出場の試合も多く、必ずしも満足できる1年ではなかったかもしれないが、シーズン半ばの苦しい時期を乗り越え、終盤戦では再びポジションをつかみとり、厳しい残留争いに身を置いたことは貴重な経験となったに違いない。
残念ながら、徳島は1年でのJ2降格となってしまったが、藤田自身は横浜F・マリノスへの移籍が決まり、来季も引き続きJ1でのプレーが可能になった。3年後のパリ五輪に向けても、さらなる成長を期待したい選手である。
すでにシーズンオフに入ったJリーグでは、天皇杯の日程が前倒しになっていることも手伝ってか、例年以上に移籍の動きが早く、しかも活発であるように感じる。なかには思わず、「おっ」と声が出てしまうような、各クラブの主力級の名前も含まれている。
新卒加入から現役引退までひとつのクラブでキャリアを全うする、いわゆる"ワンクラブマン"は明らかな減少傾向にあり、選手は自身を高く評価してくれる働き場所を、むしろ積極的に求める傾向は強くなっている。
たとえシーズン途中であろうと、自分の力を必要としてくれるのなら、慣れ親しんだクラブに恩や愛着は感じていても離れることをためらわない。
そうした移籍の考え方が、特にこの数年で一気に当たり前になった印象を受ける。
クラブにとっても、選手にとっても、移籍の成否が成績を大きく左右する。Jリーグにも、そんな時代がやってきている。
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