大久保嘉人を変えた風間八宏監督との出会いと言葉。「走れ」じゃなくて「止まれ」「歩け」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

【中盤の選手が好きだった】

――風間フロンターレ時代、3シーズン連続得点王になったけど、エクトル・クーペル(マジョルカ)、フェリックス・マガト(ボルフスブルク)という名将も、「大久保のゴールを中心に」というチームの作り方をしていた。うまくいかなかったのは、どこに違いがあったのでしょう?

「やっぱり、伝え方かな。(自分が指導を受けた)監督のなかでは、(風間さんは)ずば抜けてうまかった。どうやったら点を取れるか、ディフェンスをはがせるかっていうのを教えてくれた。自分に合っていたっていうか」

――閃きを与えてくれた言葉はありますか?

「最初に風間さんに言われたのが、『動きすぎ』だった。だけど、小学校の頃からずっと、『(パスが)出てこなかったら、動き直しなさい』ってサッカーをしてたから。(試合中は)ずっと走っていないといけないっていうのが体に染みついていた。でも、風間さんに『お前、それをやっていて、ゴール前に来た時にシュート決める体力残っているか?』って聞かれて。俺は『残っていない』って答えて。それで、『歩いてみろ、歩きながらでもやれるから』って言われて、歩いてプレーするなんてやったことなかったけど、まずは試してみようって」

――歩く、ですか。

「普通、ふらふらと歩いていたら、『走れ』って怒られるところを、言われたとおりやってみて。ボールの出し手が出せる時、ディフェンスに仕掛けたんだけど、風間さんが『止まれ、プルアウェイする必要はない! ディフェンスが勝手に後ろに下がっていくから』って。止まって、そこでボールを出すように要求するようになった。とにかく動きすぎず、(どんなパスでも)"止められなかったら、俺のせい"、でも"止められたら、ゴールにつながる"って気持ちでやれるようになって、"簡単だ"って思えた。そこからですね、点を取り続けられたのは」

――ただ、「ストライカー」と言われるのは嫌いだった。

「そう。全然ストライカーじゃない(笑)。前にずっと張っているタイプじゃないから。俺が好きだった選手は、(アルゼンチン代表MFパブロ・)アイマール。FWじゃなく、中盤の選手(ファンタジスタ)が好きで、(ポルトガル代表MF)ルイ・コスタとか。自分とはプレースタイルが違うけど、あんな感じ(ラストパスを出せるファンタジスタ)でやりたい、という憧れもあった。ゴールだけじゃなく、彼らのようなプレーもできる選手になりたいってプロに入る前に思っていたから」

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