「誰々が抜けたから」と言わせなかった川崎フロンターレの優勝。昨季とも違う歴史的な強さを見せつけた (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 気がつけば、猛追する2位の横浜F・マリノスとの勝ち点差は一時、最少の1まで縮まった。

 三笘と田中が抜けたから――。図らずも鬼木監督の不安は的中しつつあった。「薫、碧が抜けたところで、今まで選手たちがガンガン勢いよくやっていたものが停滞した」。自身、チームの変調を認めるしかなかった。

 しかし、すでに3度のJ1制覇を知る知将は、「結果を出すために人をどう育てるか」を重要なテーマに掲げつつも、「でも、焦っては育っていかない。そこのせめぎ合いを意識しながらマネジメントしていた」。

 鬼木監督が続ける。

「我慢の時期という表現で、『勢いが少し足りなくなっても、ここを耐えれば、みんな伸びてくるよ』と、選手にできるだけプレッシャーをかけないようにして、自分にも言い聞かせながらやっていた」

 横浜FMの一時の猛追があまりに強烈だったため、川崎失速の印象は強まったが、実のところ、喫した敗戦はひとつだけ。成績上の大きな失速はなく、あえて言えば、前述の「2分け1敗」くらいのものである。

 今季のJ1は例年より2チーム多いため、試合数が異なるが、昨季の全試合数と同じ第34節終了時点の成績で比較すれば、勝利数はまったく同じ。負けがふたつ減り、その分が引き分けに回っただけだ。

 つまりは、内容的に陰りが見えたのは事実だとしても、それが成績に直結してしまうことはなかったということだ。鬼木監督の「勝負強くなっている」を裏づける。

 レアンドロ・ダミアンとともに副キャプテンを務めたDF登里享平は、「昨年は(相手を)圧倒する試合が多かったが、今年はギリギリの勝ちや引き分けがあった」と振り返る一方で、「いろんな選手が抜けたが、自分たちにできることを一人ひとりが整理して、割り切ったサッカーができていた」と、だからこその手応えを口にする。

 昨季と比べ、総得点が17点も減りながら、昨季以上の勝ち点を積み上げることができた要因だろう。

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