同年代の久保建英の域に迫れるか。川崎フロンターレの20歳が今季J1の優勝争いを左右しかねないゴールを決めた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by KYODO

 後半38分、交代出場したばかりの山村和也が、セットプレーの浮き球を頭で決め、同点とした川崎のプレーには必然性を感じた。

 このまま終了すれば、川崎は横浜FMとの差を4から5に広げるものの、状況に大きな変化はない。優勝争いを考えたとき、それほど大きな意味を持つ勝ち点1ではなかった。試合は後半のアディショナルタイムへ。表示はプラス4分だった。

 問題のマルシーニョは後半22分、ベンチに下がっていた。交代で左ウイングに入ったのは宮城天。川崎のアカデミー出身で昨年、トップチームに登録された20歳だ。その後、カターレ富山に貸し出されていたが、五輪前、復帰を果たす。三笘の去った左ウイングの位置で出場するようになった。

 切れ味鋭いドリブルに加え、1対1で相手に仕掛ける姿勢も上々だった。即、こちらに期待感を抱かせたものだが、その直後にマルシーニョがチームにやってきて、徳島戦、鹿島戦と先発を飾った。だがその出来は、宮城のほうがずっといいじゃないかと言いたくなるほどよくなかった。

 三笘がそうであるように、対峙するサイドバックを置き去りにするドリブル&フェイントを備えたウインガーは、やはり見ていて楽しい。1対1で縦抜けするプレー、切れ込んでシュートを放つプレーは絵になるし、客を呼べる。現状のマルシーニョなら、宮城のほうにその可能性を感じる。

 ただ、鹿島戦の宮城は、やや空回り気味だった。「自分が入ってチームに勢いをもたらそうとしたんですけれど、ミスが多くてダメだなと思っていた」と、試合後、宮城はインタビューに答えていた。しかし、その前向きなプレーには光るものがあった。

 後半48分、中央でボールを受けると、右足でシュート、それが跳ね返り、再び、宮城のもとにボールが来ると、思い切りよく右足のインステップを振り抜いた。鹿島GK沖悠哉は、その正面から放たれたライナー性のシュートを、セーブすることができなかった。

 宮城にとって記念すべきJ1初ゴールは、川崎と横浜FMとの差を7に広げる、まさに価値ある貴重な一発となった。今季を振り返るときに「外せないゴール」になる可能性もある。

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