長友佑都の野心の原点となる11年前の言葉。FC東京復帰でチームは激変した

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 2010年5月、東京・小平。南アフリカワールドカップに向け、筆者は長友佑都にインタビューを行なっている。

「自分のベースにあるのは、反骨心や向上心なんだと思います。それがなければ、長友佑都という選手は存在しない」

 当時、FC東京の中心選手だった長友はそう言いきった。彼の言葉は、ヨーロッパに渡ってから、生き方で実証されている。野心旺盛かつ精力的な戦いで、チャンピオンズリーグやワールドカップなど世界サッカーの最前線を駆け巡ったのだ。

「世界の一流選手と戦うことを思い浮かべると、心の底から湧き上がる興奮を感じます。やるからには楽しまないともったいない。自分は今まで支えてくれた人たちのために頑張るし、その気持ちがエネルギーになるんですよ」

 彼は言葉の端々に熱を滲ませた。それは溢れかえるほどの熱量だったのだろう。反骨心には暗さはなく、向上心には明るさが満ちていた。

 その原点に、長友は11年ぶりに戻ってきた――。

横浜FC戦に勝利を収めて喜び長友佑都(FC東京)横浜FC戦に勝利を収めて喜び長友佑都(FC東京) 2021年9月18日、東京・味の素スタジアム。台風14号の影響で大雨に見舞われた横浜FC戦で、長友はFC東京の選手としてJリーグ復帰の舞台に立っている。背番号50は、大好きな番号という5と原点のゼロから始まるという意味を込めた番号だ。

 試合開始直前、左サイドバックに入った長友は両手を天高く上げ、顔に大粒の雨を浴びている。空からのエネルギーを受け、祈るような格好になった。どこか芝居じみた仕草も、快活に世界のサッカー界で実績を残してきた男がやるとさまになっていた。パンツを誰よりもたくし上げ、逆サイドまで聞こえるように声を張り上げ、味方を鼓舞し、好プレーに惜しみなく拍手し、逐次、指示も与えていた。

 長友の存在は味方の戦闘力を高め、プレーに集中させていた。直近の代表戦で足を痛め、チーム練習に合流したのはわずか3日間だったが、世界で戦ってきた男が与える緊張感か。チームはまるで別の顔をしていた。

「チーム全体に、長友の存在が伝染していて不思議です」

 FC東京の指揮官である長谷川健太監督は言う。

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