日本人No.1の司令塔は誰か。元日本代表「10番」名波浩がベスト10を選んだ

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki

過去から現在を含めた日本人サッカー選手で、各ポジションでナンバーワンと言える選手は誰なのか。これを同じトップレベルを経験した目線で、元選手に語ってもらう。今回は「司令塔」あるいは「ゲームメーカー」として優れた選手は誰か、ジュビロ磐田や日本代表の司令塔として活躍したサッカー解説者の名波浩さんに10名の選手をピックアップしてもらった――。

 今回の「司令塔ベスト10」は、Jリーグで活躍した選手の中から選ばせてもらった。

 自分が考える"司令塔"にはいくつかの定義があるけれど、大前提となるのは、「劇的にゲームの流れを変えられるワンプレーを持っていること」。それがドリブルなのか、スルーパスなのか、セットプレーなのかはともかく、一芸に秀でた選手ということだ。

10位 野沢拓也(元鹿島アントラーズほか)

 野沢は華奢に見えて簡単に倒れないから、終盤まで厄介な存在としてずっとピッチに立ち続けられる。そのうえで、小笠原満男や本山雅志といったゲームをコントロールする選手の周りに、まるで"影武者"のようにいて、オイシイところを持っていく。その術をよく理解している選手だった。

 だから、野沢はコンスタントにゴールに絡むことができ、得点やアシストが多い。自分が考える司令塔の定義のひとつは「ゴールできること」。だから、"名波浩"はこのグループには入れない(苦笑)。野沢のJリーグ通算70ゴールはスゴい数字だ。

 初めに言った「劇的にゲームの流れを変える」という意味でも、やはり点を取れることは重要。このベスト10に名前を挙げる選手は、例外もあるけれど、軒並み多くの点を取っている選手ばかりだ。

名波氏が「ドリブルの重要性を教えてもらった」という奥大介。photo by Getty Images名波氏が「ドリブルの重要性を教えてもらった」という奥大介。photo by Getty Images9位 奥大介(元ジュビロ磐田ほか)

 ジュビロ磐田時代のチームメイトでもある大介は、ドリブルでゲームの流れを変えることができる選手だった。

 自分自身、アマチュア時代も含めて、こういうタイプの選手とチームメイトになったことはなく、初めて一緒にプレーしたのが大介。そういう意味では、ドリブルの重要性は大介に教えてもらったようなものだ。

 例えば、スピードの変化を意味する"緩急"という表現がある。自分は前後のパスの出し入れで時間を作るけれど、大介はドリブルのストップ、ターンで時間を作ってしまう。そういう選手がひとりいることは、パスサッカーに取って大事なんだと気づかされた。

 でも、大介はキャリアを重ねるうちにパスも覚え、繊細なボールも出せるようになったし、FKもバンバン決めるようになった。その成長が通算62ゴールにつながっている。

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