サガン鳥栖は戦力差をものともせず。スペクタクルにスター選手はいらない
「(アシスト、ゴールという)結果を出せましたが、他はミスが多く、もっとレベルアップが必要だと思っています」
FC東京に敵地で1-2と勝利を収めた後、殊勲者であるサガン鳥栖のMF樋口雄太はオンライン会見で語った。予算規模からして明らかに戦力的に上の相手を下しても、少しも満足していない。貪欲なコメントは、チームの現状を象徴していた。
「攻撃もですが、まずは守備のところで一体感を持って、それぞれの役目を遂行できるようになってきました。ひとりひとりがさぼらず、走って戦う。新しく強いサガン鳥栖を作るために」
昨シーズンの鳥栖は13位で、勝ち切れない試合が多かった。今シーズンも、補強はユース昇格組やJ2の選手が中心。下馬評では降格候補のひとつだった。
しかし、ふたを開けてみると12試合を戦って3位。しかも相手と五分に渡り合っての結果で、今や目標は降格回避ではない――。
FC東京戦で1ゴール1アシストの活躍を見せた樋口雄太(左/サガン鳥栖) 4月24日、味の素スタジアム。試合の入り方が良かったのはFC東京か。走力のある選手が前から出張り、押し込んだ形になる。ホームの勢いも得ていた。
もっとも、鳥栖はそんな展開を織り込み済みだったのだろう。無謀なプレスでラインを上げると、背後にボールを通され、スピードのあるアタッカーに破られる可能性がある。間合いを図りながら、徐々にペースを取り戻し、敵陣でボールを回す時間を増やしていった。そして奪われても取り返し、二の矢を放つ形が生まれた。
18分だった。FC東京の2列目がバックライン近くまで沈み込み、寄せが甘くなる。右サイドでボールを受けた樋口は、FKに近い状況で左足のピンポイントクロス。これにセンターバックの背中を取ったFW酒井宣福が飛び込み、頭で叩き込んだ。
「一瞬の隙を突かれた形で、鳥栖のしたたかさにやられました。フリーでクロスを上げられる状況を作ってしまった。ただ、中は人が揃っていたので、体をぶつけるなりで、どうにか守ってほしかった」(FC東京・長谷川健太監督)
しかし、得点シーンは単なる局面の話だったのだろうか。
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