前田大然が世界的ストライカーになるために。J最高記録でも物足りないこと (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 木鋪虎雄●写真 photo by Kishiku Trao

 サンフレッチェ広島戦の1点目は裏へのボールを収め、競り合いから一気に抜け出し、ゴールを撃ち抜いた。2点目はクロスに対し、背後を取る動きの後、前に出て合わせている。アビスパ福岡戦は右サイドからのクロスに猛然と突っ込み、一歩前に出てニアでヘディング。浦和レッズ戦の1点目は右からのクロスに対し、ニアに釣ってからファーで合わせた。そして徳島ヴォルティス戦ではビルドアップの相手に襲い掛かり、ボールを奪い切って左足でゴールした。

 しかしながら、ストライカーはスプリント力によって世界で名声を得られるわけではない。

 セレッソ戦では、前田は前半に2度、左からのクロスを受けたが、どちらも突っ込み過ぎてしまい、枠に飛ばせなかった。サイドからのボールに対し、ストライカーは呼吸を合わせてボールを叩くわけだが、まだ野性的な勘でプレーしている。過去の得点記録を見ても、トップリーグで得点を取る経験が十分ではなく、実力に落とし込むには、成功体験を重ねる必要があるだろう。これから先は相手は警戒し、動きを読んでくるはずで、それを上回れるか。

 38歳になる大久保嘉人がJリーグ最多得点記録を更新し続けられているのは、勘に頼らず、たくさんゴールを取ってきた経験を生かしているからだろう。優れた知能で集めた情報を解析するように、ボールがこぼれる場所や相手や味方の一瞬の動きを読み取ることができる。ゴールするツボを知っているし、得点パターンも多く、そこに至る技術も習得しているのだ。

 その点で前田はまだ成長途上のストライカーだろう。

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 セレッソ戦ではまた、ポストに入ってもしばしばボールを失い、くさびのタイミングも合っていなかった。その後、すさまじい勢いで相手を追いかけ、取り返す力は瞠目に値するが、効率的ではない。自陣から馬力のあるドリブルで持ち上がっても、奪い返されていたし、フリーで狙ったスルーパスが単純なミスになって相手ボールになってしまっていた。

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