2021.03.13

清武弘嗣の美ゴールを演出したパッサーに「中村俊輔越え」の期待も

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 片山と坂元。勝手知ったる関係にある両者が、今度は敵と味方に分かれてピッチ上で対峙することになったわけだが、そこで片山は後手を踏んだ。坂元に厳しく身体を寄せることができず、余裕を持ってクロスボールを上げられた。

 身体を寄せ切れなかった理由は、坂元が縦に抜いて出るドリブルという武器も備えているからだ。左足でキックすると見せかけて、切り返して縦に抜いて出るフェイントを十八番にする坂元に対して、迂闊に接近すれば、その罠に、わかっていても引っかかる。坂元のキックフェイントにはそれほどのキレがある。なので、対峙するマーカーは坂元と多少なりとも距離を取らざるを得なくなる。

 懐の深さも見逃せない。利き足とは反対の右手でハンドオフしながら、相手をブロックするようにボールを保持すると、ボールを奪われる心配がほぼなくなる。見た目は小柄で華奢な体型だが、家長昭博(川崎フロンターレ)を彷彿とさせるキープ力がある。よってクロスボールを蹴る時間的、空間的余裕が生まれることになる。

 となれば、今度はキックが冴える番になる。坂元は一流のドリブラーでもあるが、一流のパッサーでもあるのだ。一流のパッサーではあるが、一流のドリブラーではなかった中村俊輔との違いでもある。

 もう少し言うならば、俊敏だ。プレーに活気が漲っている。坂元はそうした意味で新しく見える。Jリーグの各クラブが、4-3-3や4-2-3-1を採用することになった影響で、近年、ドリブルの得意な日本人ウインガーが急増している。三笘薫(川崎)、仲川輝人(横浜F・マリノス)、汰木康也(浦和レッズ)、松尾佑介(横浜FC)、相馬勇紀(名古屋グランパス)、前田直輝(名古屋)、中山克広(清水)、藤井智也(サンフレッチェ広島)など、枚挙にいとまがない。久保建英(ヘタフェ)、堂安律(ビーレフェルト)、伊東純也(ゲンク)と、欧州組しかりだ。

 坂元もそのひとりに加えることができるが、彼の場合はキックも得意だ。パッサーとしての魅力も備えている。清武に出した坂元の左足クロスは、「行き先はボールに聞いてくれ」というアバウトさがまるでないクオリティの高いパスだった。蹴った瞬間、その先に清武の姿がくっきり浮かび上がったものだ。