J開幕戦番狂わせ勝利の功労者は、世界でも希少なフィーゴ似ウイング (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by KYODO

 この4人の中で目に新鮮に映ったのが中山だ。この試合、清水には7人の新加入選手がスタメンを飾ったが、中山もそのひとり。昨季までの2シーズン、横浜FCでプレーしていた右ウイングだ。

 横浜FCのウインガーといえば、先述した左の松尾が想起される。松尾と中山。昨季のJリーグで出番が多かったのは松尾だったが、そもそも2人が揃って先発を飾った試合が少なかった(2試合)。どちらかがケガをしている状態がシーズンの大半を占めた。シーズン後半、中山は松尾が戦列を離れている間に復帰したものの、チームはそれとともに順位を下げていった。右のウインガーとして、爪痕を残す活躍をしたというわけではなかった。

 横浜FCの最終成績は15位。中山はそこから16位の清水へ移籍した。それは栄転なのか否か。昨季の成績に基づけば、ともに降格候補ながら、予算規模で上回るのは清水だ。単純な顔ぶれの比較でも、清水に軍配が挙がる。その清水の開幕スタメンに中山は名を連ねていた。

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 下馬評を覆した鹿島とのアウェー戦ではフルタイム出場を果たした。実際、右の高い位置に張る中山の存在は終始、効いた状態にあった。少なくとも、鹿島の右サイドハーフ、ファンアラーノより効いていたように見えた。中山を最後までピッチに立たせたロティーナの判断には、同意したくなる。

 後半25分。先制したのは鹿島だった。だが、清水はその3分後に追いついた。得点者はチアゴ・サンタナだったが、河井陽介の左からの折り返しに、最初に反応したのは中山だった。そのシュートのこぼれを、チアゴ・サンタナが身体を張って押し込んだわけだが、その時、右ウイングの中山が中央に詰めていたことが、この同点弾を語る時、見逃せない要素になる。

 前半35分にも似たような状況が訪れていた。カルリーニョス・ジュニオの折り返しを、中山は中央で受けていた。トラップさえ決まれば、ゴールは6、7割方、決まるのではないかと言いたくなるチャンスだった。

 シュートは、トラップが足元に入りすぎたために右に逸れたが、外したという事実よりも、その時そこにいたという事実を評価したくなった。ゴール前で決定的なプレーに関与できそうな右ウイング。昨季、743分間プレーして、得点0だった選手とは思えないポジションセンスを披露した。

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