栄華を極めた広島と酷似。完成形を迎えた今季の川崎につけ入る隙あり (3ページ目)
では、黄金時代到来をも予感させた、2015年当時の広島が、その後どうなったか。
2016年は年間6位。そして、巻き返しを期したはずの2017年はシーズン序盤から低迷し、J2降格危機に陥った。チームを4年で3度のJ1制覇に導いた森保監督もシーズン途中で解任となり、結局、広島は辛うじて降格こそ免れたものの、15位に終わっている。
もちろん、当時の広島と現在の川崎では戦力に差がある。広島には申し訳ないが、今季の川崎が4、5年前の広島のように急激に低迷していくとは考えにくい。
だが、おそらく広島の前例は、ひとつの完成形を迎えたチームが、さらなる高みを目指すことの難しさを物語っている。
昨季の川崎は、前季に逃したリーグタイトルを奪回。しかも、天皇杯も併せて制し、クラブ初の二冠を達成する充実のシーズンを過ごした。
加えて、内容的にも他チームを圧倒し、史上最強と称されるほどにまでサッカーの質を高めていた。選手やスタッフにその気はなくとも、そこに少なからず達成感や満足感が生まれたとして不思議はない。
当然、誰もが満足感など口にはしないし、さらに上を目指そうと考えているはずだ。だが、もともと弱かったチームと違い、極限に近いところまで強くなったチームにとって、"さらに上"は簡単にたどり着ける場所ではない。
また、今季の川崎は引退した中村憲剛を筆頭に、守田英正(サンタ・クララ)、齋藤学(名古屋グランパス)ら、計算できる戦力がチームを去った一方で、新たな戦力補強は、ジョアン・シミッチを除くと、J1実績に乏しい選手が中心。昨季との比較で言えば、戦力ダウンの評価が妥当だろう。
まして、今季はAFCチャンピオンズリーグも並行して戦わなければならない。ACLの負担がいかに大きいかは、過去の出場チームが証明しているとおりだ。
もちろん、仮に川崎が昨季より少々弱くなったとして、今季J1の優勝候補であることは疑いようがない。だが、昨季ほどの圧倒的な強さで独走するとも考えにくい。
少なくとも、他チームがつけ入る隙はありそうだ。
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