大黒将志は伝えたい「偶然はダメ。理屈でやるからゴールを決められる」 (2ページ目)

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

「最初は嫌でしたよ(笑)。当時はドリブラーやったんで、ユースの試合だと、ドリブルで2、3人抜けたんです。トップに上がる選手って、だいたいそれぐらいできるじゃないですか。だから、動き出しやプルアウェイ、ウェーブの動きとかも、『なんでやらなあかんねん』と思ってたんですよ。こんなんせんでも、来たボールをトラップして、ドリブルして相手を抜いて、シュートを打ったらええやんって」

 嫌々ながらも「人の話を聞く耳は持っているほうなんで」という柔軟さで、教わった内容を自分のものにしていった。その大切さに気づいたのは、プロになってからだった。

「プロのレベルになると、地域でいちばんうまいヤツらしかいないわけで、そのなかでドリブルで2、3人かわしてシュートなんて、メッシぐらいしかできない。じゃあどうするかってなって、ユース時代に教わったことを思い出したんです」

 どうすればマークを外し、フリーでシュートを打てるか――。大黒はユース時代の教えをもとに、試行錯誤していった。そしてプロ3年目、それまで中盤の選手としての起用が多かったなか、西野朗監督に「FWをやらせてほしい」と直訴。そこからストライカー大黒の快進撃が始まった。

「ユース時代、西村さんに教わったことはめちゃめちゃ大きかったです。この前、電話して『西村さんに教えてもらったことで、22年間御飯が食べられました』ってお礼を言いました。もちろん、ほかの指導者にも感謝していますけど、現役をつづけられた最大の武器は、西村さんに教わった動き方。それがベースです。偶然じゃダメなんです。理屈でやるから、これだけゴールを決められたんやと思う」

 プロで長く活躍するために何が必要かを、身を持って理解している。今後はユースを中心とした、アカデミーの子どもたちに"ストライカーコーチ"として指導していく。指導のイメージを尋ねると、こう返ってきた。

「まずはキックですね。左右両足で、正確に蹴ることを教えないといけない。僕はガンバで取り組んだおかげで、右のほうが若干コントロールがいいですけど、左も同じぐらい蹴れるんで。右足で打てる場面でも、あえて左足のアウトサイドでシュートしたりしますから。そうすると、GKはタイミングがずれるので取れない。GKのタイミングを外すために、蹴る足を変えるのはめっちゃ使いますね」

 キックの次はヘディング、そしてGKとの駆け引きへと、指導は発展していく。

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