J1の移籍状況だけで推し量る、今季の躍進が期待できるチームベスト3 (2ページ目)

  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

最高に近い補強となった名古屋
復権の準備は整ったが...

小宮良之氏(スポーツライター)

名古屋での活躍が期待される柿谷曜一朗名古屋での活躍が期待される柿谷曜一朗1位=名古屋グランパス

 名古屋グランパスを率いるマッシモ・フィッカデンティ監督は2020年シーズン、GKミッチェル・ランゲラックを中心に堅牢なチームを作り上げた。リーグ最少失点を記録。イタリア人指揮官にとって、守備の植えつけはお手の物だ。

 J1制覇に向け、名古屋が必要とするのは得点力だろう。守備をベースにした戦いを、攻撃的にシフトするのは人を替えるしかない。単純に、得点力を備えた選手を獲得し、駒を増やすのが至上の策だ。

 その点、最高に近い補強になった。

 柿谷曜一朗(セレッソ大阪→)、齋藤学(川崎フロンターレ)の2人のアタッカーは貴重なカード。攻撃のバリエーションを生み出せるだろう。柿谷はムラがあるが、トップでプレーする強さもあり、ワンプレーで流れを変えられる。そして、齋藤のドリブルは相手に決定的ダメージを与えられる。

 また、守備面も補強できた。MFジョアン・シミッチ(→川崎)の放出は痛いが、監督の信奉するプレースタイルとは合っていなかっただけに、大きなマイナスにはならないだろう。新戦力の長澤和輝(浦和レッズ→)は、中盤で堅実な働きができるはず。また、木本恭生(C大阪→)はボランチ、センターバックを兼務し、プレーにインテンシティを注入できる戦術的プレーヤーだ。

 額面どおりいけば、復権の準備は整ったが......。


2位=清水エスパルス

 清水エスパルスは、スペインの名将ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(C大阪→)と契約できたことが大きい。過去現在、Jリーグに来たスペイン人監督では格が違う。その仕事は堅実で論理的。守りを出発点に、ポジショニングや適切な判断をトレーニングで高められる。結果、試合を重ねるたびに少しずつ選手の力を引き上げられるのだ。

 ロティーナ監督の招聘は、在籍選手のレベルを上げることにつながり、有力選手の補強をはるかに超える。


3位=鹿島アントラーズ

 鹿島アントラーズの補強は新卒や下部組織昇格選手以外は、現時点でブラジル人のFWアルトゥール・カイキ(アル・シャバブ/サウジアラビア→)と、MFディエゴ・ピトゥカ(サントス/ブラジル→)の2人だけ。しかし、その"静けさ"がチームとしての盤石さを伝える。スカウティングに優れるチームならでは、獲得してきた選手が確実に戦力になっていて、若手の台頭も十分に予想されるだろう。

 ちなみに、カイキはビジョン、テクニックに優れ、相手のタイミングを外すプレーを得意とし、楽しみな新戦力だ。

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