「師匠と弟子」。中村憲剛からの宿題に大島僚太は挑みつづける (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

◆中村憲剛と小林悠、「兄と弟」の11年。話さずとも感覚を共有できる関係>>

「その瞬間、等々力の空気が変わりました。それまでは、シュートまで持ち込めなかったのに、憲剛さんは多少強引に見えたそのシュートで、会場も、試合の雰囲気までをも変えたんです。その時、思い返してみたら、憲剛さんはシュートだけでなく、1本のパスでも相手の勢いをひっくり返すようなプレーをしていた。それをどんな試合でも狙っていたし、実行してもいたんです」

 翌日に中村が引退会見を行なうことは知っていた。その直前の試合で大島は、中村からもらった宿題の答えを、本人にまた見せつけられたのである。

「フロンターレは生え抜きの選手が多いですし、歴史をつくってきてくれた先輩たちの背中を見て、僕も育ってきました。その幹を崩すことなく、強いままでありつづけなければという責任感はあります。憲剛さんのような存在になれるとは思わないですけど、そこを追い求めていかなければいけないとも思っているんです。

 ファン・サポーターに与える影響力、相手チームに与える影響力というのは、限られた選手にしか出せないもの。でも、僕はそこを目指したいし、それが憲剛さんからの宿題でもあると思っているんです。みんなでフロンターレをつくり上げていきながら、僕自身はそこを目指したいなと思っています」

「背負う覚悟はあるか」と問いかけるのは野暮だと思った。だから、「最後にして最大の宿題をもらったね」と問いかけた。

「僕自身は勝手に、まだまだ憲剛さんはいてくれるものだと思っていたんです。でも、たくさんのチームメイトがいるなかで、直接呼ばれて、引退を告げられた身としては、自分に課された責任だと思いますし、背負うというか、背負うべきだなと思います」

 師からの最後にして最大の宿題に、大島僚太は挑んでいく。その覚悟は、周りが言わずとも抱いている。

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