中村憲剛と小林悠、「兄と弟」の11年。話さずとも感覚を共有できる関係 (4ページ目)
◆家長昭博にとって中村憲剛は「永遠に勝てないライバルだった」>>
「キャプテンだからといって気負うことなく、今までどおり点を取ることで引っ張っていけばいいんだよ。オレのマネをする必要はないし、自分なりのキャプテン像を築けばいい。でも、それを今のあいつに言ったところで、視野も狭くなっているから、聞く耳を持たないと思うんですよね。だから、自分で気づくまで待つしかない。どうしようもなく苦しんでいたら言うけど、今はまだ、その時じゃないかな」
阿吽の呼吸で、多くのゴールシーンをつくり出してきた、中村と小林 その後、小林は自ら気づくと、文字どおり点を取ることでチームを牽引。23得点を挙げて得点王に輝くと、チームをJ1初優勝へと導いた。当時の中村とのやり取りを、今になって小林に明かすと「見透かされていたんですね」と、しみじみとうなずいた。
「僕だったら、すぐに言っちゃうと思うけど、たしかに憲剛さんは、自分で考えさせるところがありますよね」
「家族に近い」と表現した小林の言葉が妙に腑に落ちた。言えば簡単だが、自ら考えさせて成長を促す。突き放すのではなく、中村はずっと見守っていたのだ。
「ホント、お兄ちゃんみたいですよね(笑)。距離が近くなってからは、サッカーのことは全部、憲剛さんに話してきたと思います。怒られる時もあれば、褒められる時もありましたね」
来シーズンからは兄のような存在がピッチからいなくなる。それを問うと、小林はこう返事をした。
「憲剛さんの代わりなんて100%無理ですからね。自分は、今までやってきたことしかできないと思います。憲剛さんがいなくなるのは正直大きいですけど、僕だけでなく、(谷口)彰悟、ノボリ(登里享平)、(大島)僚太と、在籍年数の長い選手たちで分担していければいい」
兄には弟がしっかりと成長していると伝えたくなった。もう、小林が自分を見失うことはないだろう。
すると「あっ」と言って小林はつづけた。
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