新時代を迎えた横浜FC。大ベテランの退団が象徴する若虎たちの躍動

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • ヤナガワゴーッ!●撮影 photo by Yanagawa Go

 12月5日、ニッパツ三ツ沢球技場。試合後、ベトナム1部リーグ・サイゴンFCへの移籍が発表された松井大輔(39歳)の退団セレモニーが行なわれている。冷たい雨が降った後で気温は下がったままだったが、スタンドの観客はほとんど帰らない。

「(昨夜は)眠れなかった」

 ピッチに立った松井はそう断って、紙に書いた別れのメッセージを読み上げた。それはひとつのフィナーレだった。

 2020年シーズン、松井はリーグ戦わずか3試合の出場にとどまっている。2019年シーズンは本来の攻撃的MFだけでなく、ボランチ、センターバック、サイドバックとしても大車輪の働きで、チームのJ1昇格に貢献。まさに功労者と言える。松井とともに、昇格に一役買ったレアンドロ・ドミンゲス、カルフィン・ヨンアピン、中村俊輔など、多くのベテラン選手の出場も今季は限定的だった。そして長年、チームのエースFWだったイバは、シーズン途中でJ2大宮アルディージャへ移籍している。ひとつの時代が終わった、ということか。

 新たな時代を迎えた横浜FCでは、若き虎たちが吠えた。

サガン鳥栖戦で先制ゴールをおぜん立てした斉藤光毅(横浜FC)サガン鳥栖戦で先制ゴールをおぜん立てした斉藤光毅(横浜FC) その日、横浜FCは本拠地にサガン鳥栖を迎え、1-1と引き分けている。前半から後半途中までは完全にペースを握っていただけに、勝つべき試合だった。

 そのなかで19歳のFW、斉藤光毅はポテンシャルの高さを見せている。前半終了間際、斉藤は左サイドへ流れると、相手の弱い部分をえぐる。1対1で逆を取って前へ出ると、いったん速度を緩めてから相手DFを置き去りにし、単独で崩し切る。折り返しのクロスは相手ディフェンスの股を抜き、松浦拓弥に合わせたもので、一連のプレーは"世界"を感じさせた。シュートはGKに当たりながら、ゴールネットに吸い込まれていった。

 斉藤は後半もエリア内に入って、細かいステップからきわどいシュートに持ち込んでいる。また、ラインの間でボールを受け、それを展開するなどプレーメイキングにも参加。攻められる時間帯にはファウルを取って、流れを寸断する戦術的動きも見せた。

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