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清武弘嗣のゴールを生んだロティーナ戦術の
真骨頂。「攻撃より守備」のカラクリ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 前線やサイドの選手のポジションの取り方も、練度の高さが光った。敵にポジション的優位を与えない。先制されたシーンに関しては、エリキのゴールをアシストしたマルコス・ジュニオールの戦術的プレーを賞賛すべきで、この試合で唯一、完全に崩されていた場面と言えるだろう。

 守備が確立されていることによって、前線は影をひそめることがあっても、したたかに反撃のチャンスを狙っていた。後半7分に失点した直後だった。リードした横浜FMの勢いが弱まったこともあって、セレッソは巻き返す。奥埜博亮が抜け出し、際どいシュートを放つ。敵陣で奪ったFKでは、都倉賢が豪快なヘディングを打ち込む。こうして横浜FMのハイラインを凌駕し始める。

 そして後半13分、瀬古がロングキックを坂元達裕のヘディングに合わせ、そこからのパス交換で、再び坂元が受けると、それをゴール正面の清武弘嗣へ流す。20?以上は距離があったが、清武は前に出ていたGKを計算し尽くした、ループ気味のロングシュートを右足ダイレクトで沈めた。

 そして今シーズン、セレッソが好調の理由は、同点に甘んじないことだろう。同点にされて浮足立った横浜FMに対し、攻撃の強度を上げる。後半20分には、清武のパスから完全に抜け出した片山瑛一が横浜FMのディフェンスに後ろから倒され、レッドカードを誘発。これで数的優位に立った。

 もっとも、ロティーナ・セレッソは大きくやり方を変えていない。しっかりと守り固め、攻撃を狙う。ただ、ボランチの木本恭生を下げ、FW高木俊幸を入れ、FWに入っていた奥埜をボランチに下げている。最小限の変化が、王手となるのだ。

 後半41分、右サイドで相手ディフェンダーと1対1になった坂元は、得意とする左足でボールを運びながら、中に切り込むような動きを一瞬だけ見せた後、一気に縦を突っ切る。完全にマーカーの逆を取った。そして、右足で狙いすましたグラウンダーのクロスを折り返すと、これをエリア内でフリーの高木が難なく押し込み、決勝点とした。

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