2020.08.02

究極のリアリスト。セレッソ大阪
ロティーナ監督の絶対的定理

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 しかし、大外からのアバウトなクロスでは、マテイ・ヨニッチ、瀬古歩夢という高さに自信のあるセンターバックに跳ね返される。コンビネーションで崩すには後ろが重たく、打つ手は乏しかった。唯一の活路は、強いプレッシャーからショートカウンターを狙う形だったが、決め切れなかった。

 セレッソは、前半20分過ぎから10分間ほど、守備に乱れが出ていた。たて続けに自陣でパスミスを犯し、失点を食らってもおかしくなかった。

 しかし、高い練度を誇る守備は、やがて落ち着きを取り戻す。そしてロティーナは、守るだけでなくゴールの手段をいくつか用意していた。そのひとつが、右サイドで躍動した坂元達裕だった。

 後半27分、右サイドでボールを受けた坂元は、エリア内でディフェンスを背負った選手に右足で縦パスを入れると、マーカーを引きはがすように猛然と駆け寄って、エリア内で再びボールを受ける。そこで後ろからディフェンスに倒され、PKを得た。

 一瞬のプレー強度で、相手を勝ったのだ。

 ロティーナはスペインの中でもバスク人だ。バスクのチームは"同足"(サイドと同じ利き足)のサイドアタッカーを使う場合が多い。単純に縦を突っ切る馬力、もしくは絶対的クロッサーを配置。たとえばバスクの名門アスレティック・ビルバオの右サイドは、圧倒的なパワーとスピードを誇る右利きイニャキ・ウィリアムス。レアル・ソシエダも、プレーインテンシティが高く、一気にエリアに突っ込める右利きポルトゥだ。

 世界的には逆足が全盛だ。例えば左利きのリオネル・メッシ(バルセロナ)、モハメド・サラー(リバプール)、リヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)、久保建英(マジョルカ)は右サイドを担当し、中に切り込む。

 ロティーナは、今シーズンは右サイドに馬力のある坂元を起用しているが、昨シーズンはJリーグ最高のクロッサーと言える水沼宏太(横浜F・マリノス)を好んで使っていた。"同足"はタッチライン際でボールを持って、仮にボールを失っても、(中央の危険地帯への守備を)立て直せる猶予が長く与えられる。その点も、慎重な指揮官らしい。