2020.07.19

ロシア移籍の橋本拳人が明かす
「裸一貫、世界で戦いたい」と思った契機

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

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 7月18日、味の素スタジアム。FC東京の下部組織からトップチームに昇格し、プロ9年目になる橋本拳人(26歳)は、浦和レッズを下した試合を最後にひとつの別れを告げた。その信念を裏切らず、ロシアプレミアリーグ、ロストフへの移籍を決断したのだ。

ロストフ(ロシア)への移籍を発表した橋本拳人(FC東京)「エフトー(FC東京)では中学のころから、"立ち向かえるか、乗り越えられるか"というメンタリティを叩き込まれて。それで乗り越えた時、"ぐっと行く"という感覚が自分のものになってきたんです。それが、今の自分につながっているんだと思います」

 橋本は言う。現状に甘えず、"無難"を選ばなかった。新たなチャレンジをする欲望に従い、できなかったことをできるようになる"痺れ"を求めたのだ。

「ロシアでは、いい意味で今までの自分を取っ払って挑みたいですね。裸一貫の自分を見てもらうというか。自分を知らない人たちの前で、その価値を高めてみたい。ロシアの情報は少ないですが、むしろわくわくしますね! "やってやる"っていうプロに入った時の気持ちを思い出します。どんなプレーをすれば、ロシアではナイスプレーってなるのか、未知の世界に飛び込むのが楽しみです」

 ロストフとは4年契約になる。年内で契約が切れる選手の移籍金としては、異例の金額が提示されたという。ロシア移籍は、運命だったのかもしれない――。
 
 橋本の特徴は、まず身体能力の高さにある。まるで関節が外れ、足が伸びるようにして、ボールを刈り取れる。また、ゴール前に向かう時は、ユースまでFWだった時の迫力も出る。攻守の間合いが広く、ダイナミズムを感じさせるMFだ。

 ただ、そのプレーの本質はフィジカル面にはない。

 頭の回転が速く、常に正しいポジションを取って、攻守にアドバンテージを取れる。たとえば、相手のコントロールのミスを誘えるし、ボールのこぼれる場所を予測できる。また、迅速に正確にパスをつけることで、味方にも優位を与えられる。周りを補完し、良さを引き出し、チームそのものを生かすことができるのだ。