ネルシーニョ率いる柏レイソルの魅力。啓示的なのは2013年の戦い (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

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 当時の柏は、勝利するために実務的な戦いを重んじていた。たとえば、ボランチはポジションを留守にしない。持ち場を明け渡さない、堅実な戦い方だ。

 一方、選手たちはその規律の中で個性を出していた。縦パスで攻撃スピードを上げ、守備リスクを下げる一方、ボールを引き出し、敵を引きつけ、味方を使う。プレスをはがし、ボールを前へ運ぶ。守備一辺倒ではなかった。

 勝利するたび、選手は自信を手にした。プレーに確信が生まれることになった。粘り強く、泥臭く戦ってものにした勝ち点を、力に変えられたのだ。

 その点、ネルシーニョは天才的なモチベーターだった。

 シーズン終盤の監督就任でJ2に降格した2009年から、ネルシーニョは"常勝集団"の構築に着手した。怯懦(きょうだ)する選手、怠惰な選手を許さない。叱りつけ、怒鳴りつけ、空気を引き締めた。その緊張感のなか、選手が戦いの感覚を研ぎ澄ませていった。

 そして、2010年にはJ2優勝で昇格。2011年にはJ1で優勝を飾って、クラブW杯ではサントス(1-3)と激闘を演じた。2012年には、天皇杯で優勝している。

 驚くべきことに、毎シーズン、タイトルを勝ち獲っている。その間、チームは世代交代、新陳代謝を余儀なくされた。酒井宏樹のように頭角を現して、欧州に移籍する選手もいて、人材マネジメントは難しかったはずだが......。

 5年目の2013年は、ひとつの集大成だった。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でベスト4に勝ち進み、悲願のアジア王者に最も近づいた。そして、リーグ優勝は逃したが、ナビスコカップを制覇したのだ。

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