ドウグラスが備える矜持。「ヴィッセルは無冠に終わってはいけない」 (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

「FWというポジション柄、周りには当然、ゴールを求められますし、それも大事な役割だと自覚しています。ただ、僕がこれまでのキャリアで常に意識してきたのは、ゴール以上に、自分の持っている力を目の前の試合で100%出し切ってプレーすることです。

 守備の部分でも、ファーストディフェンダーとなって仲間を助けたいし、試合展開によっては、仲間のゴールをお膳立てするために、前線で身体を張ることもあると思います。つまり、大事なのは、個人的な活躍より、チームが勝つための仕事です。

 そして、試合でそのようなパフォーマンスを発揮するために、シーズン中は常に目の前の試合に向けて、メンタル、身体、フィジカルを研ぎ澄ませておきたいと考えています。物事というのはいつだって、その準備にふさわしい結果に動いていくはずですから」

 苦労して辿り着いた"今"だからこそ、おごることなく、謙虚に日々を過ごし、結果を求める。

 その先に描くのは、もちろん"タイトル"にほかならない。だが、広島時代にJ1王者に輝いた経験を踏まえ、それを手に入れるまでの長く、厳しい道のりを知っているからだろう、一歩ずつ、着実に前に進んでいくと決めている。

「目標は、タイトルにあります。というより、ヴィッセルが無冠に終わってはいけないと考えるべきだと思います。そのために、クラブから期待されている以上の、自分を出していきたいと思っています」

 背番号は、清水時代と同じ「49番」を背負う。日本では「9番」のイメージが強いドウグラスだが、今回も背中には、2つの数字が並ぶ。彼にとって大切な2人を想いながら。

「『4』は奥さんの誕生月。『9』は亡くなった僕の母の誕生日です。『9番』が空いていなかったこともあって、この数字にしました」

 少し照れくさそうにして、ドウグラスは優しく微笑んだ。

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