鹿島の新監督は中田英寿の元同僚。今までのブラジル人とはひと味違う (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 彼はまた、UEFAのプロ監督としてのライセンスを3種類持っている数少ないブラジル人でもあり、コーチとしてヨーロッパのチームに所属した経験を持つ。古巣のローマのアシスタントコーチ、ウクライナのシャフタール・ドネツクのアシスタントコーチを務め、シャフタールではチャンピオンズリーグにも出場している。ヨーロッパからブラジルに戻ると、名門インテルナシオナルの監督を務め、また、ジュヴェントゥージとフォルタレーザではチームを3部から2部に引き上げた。ちなみにブラジルではこういう"下克上"は非常に難しい。こうしてザーゴは注目の若手監督となった。

 鹿島と契約を結ぶ直前まで、レッドブル・ブラガンチーノの監督を務めていた。彼はそこで多くの勝利もたらし、チームの記録を塗り替えた。ブラジル全国選手権2部リーグでは、第6節に首位に躍り出ると、そのまま下に落ちることなく31週トップを走り続け、そのまま2位のチームを7ポイント離して優勝。1部リーグ昇格を決めた。

 また、サンパウロ州選手権では準々決勝まで勝ち進み、他の4チームとともに大会の最多ゴールをあげた。4チームとはサンパウロ、パルメイラス、サントス、コリンチャンスといった押しも押されもせぬ名門である。大会のあと、ザーゴは最優秀監督に選ばれた。

 レッドブルは金をかけていい選手を集め、トップリーグに臨むつもりだった。チーム幹部もサポーターも希望に満ちていた。しかし、ここで思いもかけないニュースが舞い込んだ。ザーゴが次のシーズン、ブラガンチーノを率いないというのだ。新シーズンの彼の行き先は鹿島。この移籍は物議を醸した。自らトップリーグに導いたチームをどうして捨てることができるのか、レッドブルとの契約も尊重すべきだ......などの意見が噴出した。

 一方で、ザーゴの鹿島行きを評価する者もいた。アジアで最強のチームへの移籍は、ザーゴのキャリアにとってアップグレードにほかならない、と。

 そして、ザーゴを鹿島の監督に選んだのは、ほかでもないジーコだった。
(つづく)

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