2019.12.29

明大サッカー部栗田監督は三足のわらじ
「アホみたいな生活です(苦笑)」

  • 小室 功●取材・文 text by Komuro Isao
  • photo by Komuro Isao

「昨年、亡くなられた総監督の井澤(千秋)さんや前監督の神川(明彦)さんから受け継いできた明治大学の伝統を次の世代につなげていかなければいけないですからね。後任ができるまでは何とか続けていこうと思っています。明治大学の目的はプロのサッカー選手を養成することではなく、あくまでも人間形成です。そこにまず目を向けて、いろいろな刺激を選手たちに与えていきたい。勝ち負けはもちろん大事ですが、勝ち負けとはまた違うところの価値もしっかり追い求めていきたいなと考えています」

 勝ち負けとはまた違うところの価値――。栗田監督の発した、この一言が記憶に刻まれた。

 今年度の部員数は総勢59名だった。そのうち4年生は16名。半数の8名がJクラブに進む。卒業後の進路はさまざまだが、栗田監督が常々、選手たちに伝えてきたのは「視野を広げること」だ。

 その一環として、毎週木曜日に全体ミーティングを行なっている。ビジネスマンの顔を持つ栗田監督が仕事上の経験談を語ったり、サッカー界とは異なる業種の専門家を招き、講演してもらうこともあるとか。

「知らない話をたくさん聞くことができて、すごく参考になるし、将来に役立つ。こういうミーティングをしている大学はあまりないんじゃないか」と、選手たちは口をそろえる。

「これから社会に出ていくと環境が変わったり、置かれた立場が変わったりするけれど、自分が何を求められていて、どうすればいいのか、しっかり判断し、持っている力を発揮しなければいけない。そこはプロの選手でも社会人でも同じなので、そのための取り組みが必要だと思っています」

 栗田監督もまた視野を広げるための努力を惜しまない。

「僕自身が現状に満足したり、自分の経験だけで物事を判断し始めたらチームの成長は止まってしまうので、新たな刺激を受けるように心がけています。18年に早稲田大学のスポーツMBA Essenceを受講したのもそういう理由からでした。いろいろな方々に出会って人脈が広がりましたし、有意義な時間を過ごすことができました」