横浜FMに欠かせなかった2つのピース。特異なスタイルを完成させた (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 いわば、その集大成が、最後の"優勝決定戦"だったに違いない。横浜FMは試合終盤、退場者を出し、ひとり少ない状況になったにもかかわらず、依然としてボールを保持して押し込む時間を作ることができていた。畠中が笑顔で語る。

「シーズンの最後に、優勝争いをしているチームを相手に、完封勝利できたのはうれしかった」

 畠中が「(アンジェ・ポステコグルー)監督はブレないので、相手や時間帯でサッカーを変えない」と話すように、横浜FMの優勝の最大要因は、目指すスタイルがかなり特異なものでありながら、それをチーム全員で確立できたことにある。相手がどんなに対策を施してこようとも、自分たちのサッカーができれば、勝てる。そんな信念に基づいたチーム作りが実を結んだわけである。

 とはいえ、15シーズンぶりのJ1制覇を語るとき、その要因となった失点減において、やはりふたりの選手の存在を特筆しないわけにはいかない。

 GKの朴一圭と、センターバックのチアゴ・マルチンスである。

永井謙佑(左)の突破を阻止する朴一圭永井謙佑(左)の突破を阻止する朴一圭 前述したように、選手同士の距離を縮め、コンパクトな状態で攻守を繰り返す横浜FMのスタイルは、必然、DFラインの背後に広大なスペースを生み出す。いわば、特異なスタイルゆえの副作用である。

 もちろん、そのスペースを相手に使われ、カウンターを受けるようなボールの失い方をしない、というのが、大前提ではある。

 だが、人間のやることに絶対はない。試合のなかでは、少なからず背後のスペースを突かれるケースが生まれてくる。そのときに力を発揮したのが、今季新加入の朴一圭と、昨季途中に加入したチアゴ・マルチンスだったのだ。

 朴一圭は、攻撃時のビルドアップに加わるのはもちろんのこと、守備に切り替わった瞬間には、自身の周囲に広がるスペースを狙った相手のパスを瞬時に察知して、的確に落下点に入り、ボールを処理。最後のFC東京戦でも、FW永井謙佑のスピードを生かすべく、DFラインの背後に入ってくる相手のロングパスを、素早い出足でことごとくカットした。

 ペナルティーエリア外のファールで、退場処分を受ける結果にはなったが、本人も「自画自賛できる」と振り返るほど、スペースカバーは完璧だった。

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