浦和レッズがACL完敗。
興梠慎三から橋岡大樹に託された深い思い

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 完敗した後の夜空に何を見ていただろうか。

アルヒラルとのACL決勝を戦う、浦和・橋岡大樹アルヒラルとのACL決勝を戦う、浦和・橋岡大樹 浦和レッズの橋岡大樹はACL決勝の終了の笛が鳴ると、ピッチ上に倒れ込んだ。しばらくそのままでいると、やってきた主将の興梠慎三に手を差し伸べられて起き上がり、重い足取りで大勢のレッズサポーターが陣取るゴール裏へ向かい、深くお辞儀。セレモニーの間もうなだれ続けていた20歳のWB(ウイングバック)の姿からは、やり場のない悔しさが伝わってきた。

「とてもいい相手でした」と、この決勝に出場した最年少選手は試合後に語った。

「もっとできると思っていましたが、完敗したのは認めないといけないです。この悔しさを忘れずに、また何年後かに、世界中に成長した姿を見せたいです」

 この日のセカンドレグは0-2、トータルスコアは0-3。浦和を破ったアルヒラル(サウジアラビア)は、ニュートラルに見て、すべての面で相手を凌駕していた。

 バフェティンビ・ゴミス(元フランス代表)、セバスティアン・ジョビンコ(元イタリア代表)、アンドレ・カリージョ(ペルー代表)、チャン・ヒョンス(元韓国代表)はもちろん、サウジアラビアの選手たちもほぼ全員が代表クラス。

 サルマン・アルファラジとアブドゥラー・オタイフのセントラルMFを中心に洒脱なポゼッションを展開し、サイドと前線にはパワーとスキル、スピードに優れる面々が揃う。

 その強烈な個々を今夏に就任したラズバン・ルチェスク監督(シャフタール・ドネツクでUEFAカップを制した戦術家ミルチェア・ルチェスクの息子)が、組織的なチームに昇華させていた。

 ファーストレグは浦和のGK福島春樹のビッグセーブもあり、0-1で終わっていたが、スコア以上の差があったのは明らかだ。それでも、真っ赤に染まる埼玉スタジアムでは、大逆転が起こるかもしれない。そんな期待感は確かにあった。試合前には壮大なコレオグラフィーがスタンドを彩り、「We Are Reds!!」の大声援はこれまでに聞いたことがないほどの音量でスタジアムにこだました。

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